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「人の話を聞くこと」は難しい?人の話を上手に聞くコツとは<後編>

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「人の話を聞くこと」は難しい?人の話を上手に聞くコツとは<後編>

最終更新日:2022/08/25

営業拠点の責任者だった頃の私は、とても悩み多き時期でした。

「若手の離職率抑制は当たり前。戦力化も進めよ!と上は簡単に言うけれど、一体どうしたら?」
「若手ともっと対話したいけど、飲み会って時代じゃないし・・・」
「今どきの若者は、何を考えているのやらイマイチよくわからない」
「1on1っていうのがいいらしいけど、どうすればよいのか?」
などと日々もやもやしていました。

本日は、私と同じようなお悩みをお持ちの中間管理職や人事担当者に向けて、私がこれまで学んできたことをお伝えすることで“対話の重要性”だったり、“良い聞き手になるコツ”だったり、“効果的な聞き方”だったりを知っていただきたいと考えています。そして、少しでも皆様の思考がすっきりしていただければ幸いです。
 いつも通り、リラックスしながらお読みいただけるようにと思っています。何かちょっとした気づきがあなたの中に生まれてくれることを願っています。そして、もし少しでも興味を持たれましたら、あなたにもコーチを目指していただいても良し、コーチングを受ける側になっても良し、とにかく行動していただきたいのです。そして、身近な誰かに貢献し、身近な誰かから学びましょう。

▼人は「見たいように見て、聞きたいように聞いている」

普段の生活の中でこのようなことは無いでしょうか?

例えば、ペットを飼おうかと考え始めると、街中のペットショップやペットのCMなどがやたらと目に飛び込んでくる。また、おなかがすいているとどれも美味しそうに見えて、ついつい多めに買ってしまう。

これらは、脳のレセプター(受容体)が働き、あなたにとって必要な情報を脳が自動的に選択して、受け取っているという人間の脳の機能です。つまり、本能なのです。苦手な人の発言は、いちいち癇に障る。なども同じような現象によるものです。

私たちが、「聞く」能力を身につけるためには、まず、このような脳の仕組みがあることを理解することが何より大切です。そして、逆にこのレセプター(受容体)をうまく利用して、他人の話は、自然には頭に入ってこないことを認識しつつ、聞くことが必要になってきます。つまり、話し手に対して興味と関心を無理やりにでも持つことで、相手の話を脳に入れる作業が必要なのです。

▼人の話を聞くコツとは その1

では、具体的にはどうすればよいのでしょう?

もし、相手が初対面で気が合いそうな人や、少しでも共通点がありそうな人であれば、自然と「興味・関心」が湧いてくるので、比較的簡単にできるでしょう。
しかし、問題は、以前から知っている職場のメンバーなどの場合です。

職場のメンバーで付き合いが長ければ、これまで一緒にお仕事をした経験や、周りからのその人に関するうわさ話など、いろいろな情報が自然にインプットされてしまっています。その結果あなたの中に「Aさんは、▲▲なひと」といった情報が脳に記録されてしまいます。これが「レッテルを貼る」っていうやつです。

これは、私たちの「聞く」作業を阻害している大きな要因のひとつです。

実は、このレッテルという機能も人間が身を守るための本能の一種ですから、決して悪いものではありません。ただ、人の話を聞くときには、たちまち大きな障害になってしまいます。

では、どうすればよいのか?

これは、とても簡単。といいつつも、とても難しいのですが・・・。

「自分がその人に貼っているレッテルをいったんはがして、脇に置く」ことが必要になります。

その上で、「本当は、この人はどういう人なんだろう。」というマインドに自分を置く努力をします。相手に対して「わかっている」から「知らない・わからない」へシフトするのです。いくら付き合いが長くても相手のことをすべて知っているはずはありません。 そうです。わからないことはまだまだたくさんあるのです。知らないこと・わからないことに興味・関心を持つことが、人の話を聞くための最も重要な姿勢であり、コツでもあるのです。

▼人の話を聞くコツとは その2

人の話を聞くためにとても大切なコツは、先述の通り自分のマインドセットです。そして、もう一つのコツは、相手に向かう姿勢です。つまり「話し手が話しやすい態度を作る。」ということです。

相手に興味・関心を持つということは、話し手にとっての話しやすい態度と言えます。例えば、私たちの日常生活において、家族やパートナー、コールセンター、営業担当の方の態度などは、あなたにとって親しみやすいと感じていませんか?その理由は、彼らが、あなたに興味・関心を持ってくれている人たちばかりだからです。

では、逆に相手が話しづらくなるというのは、どういう態度でしょうか?

基本的には、「興味・関心がない態度」と言うことになるわけですが、それ以外にも5つの態度があります。

1.攻撃的
話の腰を折る。険しい顔つき、貧乏ゆすりなどのイライラした態度
2.優位に立とうとする態度
すぐに論破しようとする人、「勝ち・負け」、「ある・なし」、「できる・できない」など二極化に対立軸を取ろうとする態度
3.上の空
視線を合わせない、興味がない、話の論点が合わない
4.偉そう
足を組む、椅子にふんぞり返るなど
5.神経質
ペンをいじるなど落ち着かない態度

いかがでしょうか?聞き手のあなたに当てはまるものは、いくつありましたか?
セミナーなどでこの話をすると総じて「あーうちの上司だ!」という反応をされます。(笑)

日頃から聞くことに神経を使っている私たちであっても、うっかりやってしまいそうなものも含まれています。おそらく、あなたも、忙しさにかまけて、知らず知らずのうちにやってしまっていることもあるのではないでしょうか。

では、これら、相手に興味・関心を持つ以外、私たち聞き手には、どのようなことができるのでしょうか?

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▼よい聞き手になるために守るべき7つのポイント

よい聞き手になるコツは、実はとても簡単で明日からでも実行できるものばかりです。問題は、聞き手が、実際に実行すればよいだけなのです。

  1. 時間を工面する
    数分でも良いので、できれば定期的に話し手のための時間を確保する。
  2. 相手をたてる。肯定的な態度を示す
    あいづちはもちろんのこと、随所に相手を承認する言葉を挟みながら話を聞く。「そう思ってるんですね。」「話してもらってよかったよ」など。また、相手の目を見て聞いたり、相手の方に身体を向けて聞いたり、言葉ではなく態度で示すことも重要です。
  3. 話をしやすい環境を作る
    個室、静かな場所、WEBミーティングなど。話し手にどのような環境が良いか確認すること。
  4. 判断をしない。客観的に聞く。
    これがなかなか難しいのですが、相手の話を聞いて判断をしないこと「私は、こう考える」「それは、勘違いでは?」などと聞き手が判断を加えることは、話し手の話を否定することに繋がるの要注意。感情や先入観を排除し、あくまで客観的な立場で聞くことに専念すること。
  5. 理解できているか時々確認する。
    「今の話は、つまり〇×△ってこと?」と判断を差し挟まず、要旨を確認する。これによって話し手は、「自分のことを正しく(積極的に)理解しようとしてくれている」と実感することができる。
  6. 沈黙も時には大切
    沈黙を気にせず、ガマンすること。話し手が話すまでじっくり待つことで、相手の内側からアイデアや思いが言語化されて出てくる可能性が高まります。

▼「目的を持って聞く」とは

ここまでは、話し手が話しやすい環境づくりについてお話してきました。話しやすい環境が整ったら、今度は、話すべきことを話してもらうために聞き手の仕事は、「目的を持って聞く」と言うことになります。

聞き手の目的は、相手の行動変容を支援することですので、そこへ到達するためには、
①信頼関係→②相手の状態を把握→③行動変容という手順を踏む必要があります。

信頼関係については、ここまでやってきたことを積み重ねたり、理想の仕事や理想のライフスタイルなど、話し手の考え方の基本を共有・肯定することで徐々に構築することが可能です。

ここまで出来たら、次は、現状の共有へと進みます。

▼状況を把握するために聞く

状況把握は、聞き手として状況理解を深める意味もありますが、話し手のために行う意味の方が大きいのです。つまり、話し手も正確に理解できていない状況(事実)を明らかにするための対話となります。

例えば・・
話し手:「普通の人はあんな風に進めたりしない!あれは、問題がある。」
聞き手:「普通はそういう風な手順ではしないのですね?問題があるのですね?」「具体的に言うと、普通の手順はどのような手順や基準になっているのですか?」

つまり、“普通”、“みんな”、“問題”というのは、話し手の主観が入った判断の結果であり、事実を誤認している可能性もあります。それを否定せずに確認・共有するための質問が必要になります。

例えば・・・
話し手:「あの人はいつも〇×だから・・・」
聞き手:「あの人はいつも〇×なんですね。」「いつもとは、毎日ですか?〇×と感じるような出来事は、いつあったのですか?」

こちらも、衝撃的であったことや、自分にとって不都合・不快な事実(単なる噂話の可能性もある)について、いつも〇×だ。と決めつけてしまう傾向にあります。これも状況を間違って把握している可能性が高いケースです。

メラビアンの法則によると、人は、話しの内容ではなく、話し手の視覚的要素や話し方など非言語情報で相手を判断してしまう傾向にあると言いますから、仕方のないことなのです。

例えば・・・
話し手:「どうせ自分は、〇×と思われている。」「〇〇を変えるのは無理だ」
聞き手:「ご自身が〇×と思われていると感じているのですね。なぜそのように感じたのですか?」「○〇を変えるのは無理なんですね。なぜ無理だと分かっているのですか?」

人は、何度も同じことを考えることでその考えが強化される傾向にあります。実は、単なる思い込みであったり、思い込みによって事実よりも何倍にも強化されているケースが多々あります。

話し手の使う言葉や、表情でも、前提を感じることができます。

例えば・・・
話し手:「まだやらなければならないの ?」
前提:「すでに十分やっているのに・・・もう勘弁して」という前提が読みとれます。もう少し解釈をすれば、「やりたくないのに・・・」と捉えることもできます 。

これによって、話し手の想いや感情を感じること、そして、相手の言葉を伝え返すことによって話し手にも無意識の意識に気づいてもらうことができます。

声や表情と発言に不一致がある場合・・・
聞き手「なんだか、腑に落ちていない感じですね。」「別の視点で伺います・・・」と切り口を変えてみることで話し手が心を開き、「実は・・・」となることも多いものです。

▼行動を促すための聞き方

状況が把握できたら、理想の状態とのギャップを認識することで行動変容を促していくことになります。

しかし、ここでも注意が必要です。このギャップには、認識の仕方によって2つに分かれています。
それは、次の行動変容に向かいやすいタイプとそうではないタイプです。

出所:コーチ・エイ

例えばこの図のように、同じように上司から叱られたケースにおいて「どうせ自分には能力がないんだ、これからどうしよう・・」と反応した人よりも「叱られた内容をクリアすればいいんだ。やるべきことが明確になった。がんばろう」と言う人では、行動変容のスピードや質が変わってしまうことは明白でしょう。

他にも主語が「私」や「私たち」ではなく、「〇×さんや〇△たち」となっている人も要注意です。なぜなら他人の行動をコントロールすることは自分の行動を変容するより難しいからです。

ですから、まず、私が主語となるように問いかける必要があります。「彼らが、動いてくれることがベストではありますが、もし、我々(あなた)にもできることがあるとしたらどんなことがありますか?」そうすれば、話し手の答えは、「私にできることがあるなら・・・・です。」となり、主語が話して自身に変化させることができるからです。ただし、話し手に変化を促すためには、じっくりと対話を重ねつつ問いかけていく必要があります。

このように、話し手の大切にしていることを意識しながら対話を進めていくことが有効になります。簡単に言うと得意分野を伸ばす方法が有効な場合もあれば、苦手分野の中に目標達成のためのヒントがあるために、気づけないでいる場合もあります。聞き手は、これを誘導するのではなく、一緒になって広くヒントを探っていく姿勢が求められているのです。

例えば、話し手が任務重視型であれば、「〇×さんと良好な関係を築くために、何かできそうなことはありますか?・・」など普段の思考にはない人間関係重視型の思考を提案します。

一方、人間型思考の話し手に対しては、「最短距離で仕事をゴールさせるための最優先事項とはどんなことでしょう?」と反対に任務重視型の質問をなげかけることで、思考の幅を持たせ選択肢を増やすように促します。

▼まとめ

いかがでしたでしょうか?
本日は、聞き手として上級者になるために、
“良い聞き手となるためのコツ?”
“目的を持って聞く”とは
“行動変容を促す私たちの聞く”

について、私の経験談を交えながらお伝えしました。

これらのことを理解しつつ、スタッフや同僚の話を聞くことができれば、あなたもプロの聞き手としての第一歩を踏み出したも同然です。それでも「もっと良い聞き手を目指したい」そんなリーダ方向けに今後は、具体的なテクニックについてお伝えしていきます。どうぞ、お楽しみに。

明日からといわず、今日から、気づきをもとにあなたなりに実践をしてみてください。良い聞き手になるためには、何よりも日々のトレーニングが一番大切だからです。
私も、みなさまにこのコラムをお読みいただき、自分に自信が付き、後編を書くためのモチベーションが上がりました。

本日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

中小企業診断士 山本 哲也


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