最終更新日:2024/09/04
みなさんこんにちは!
大阪堺で「経営のモヤモヤをワクワクに変える!」をビジョンに、みなさまのちょっとした変化を応援しています。中小企業診断士の山本哲也です。
本日は、自分たちだけでは気づけない自社の強みを発見する方法についてお話したいと思います。
先日もある経営者との打ち合わせでこんな会話をしたばかりです・・・
私「Aができるなんてすごくないですか?」
A社長「こんなのどこの業者でもやっていると思います。」
私「では、御社の強みはどこにあるのでしょう?」
A社長「強みなんてないです。だから苦しんでいるんです」
別のクライアントでも・・・
私「御社の強みはどこだとお考えですか?クライアントは、なぜ御社をご利用になるのでしょう?」
B社長「近いとか安いとか便利とか。だと思います」
「昔は、この辺では唯一無二の存在だったんだけどねぇ・・・」
今回のコラムは、自社の内部の強みを発見して、自信を持とうというような話ではなく・・・
自社の強みをどのようにブラッシュアップすればよいのか?
どのように顧客にお伝えすべきなのか?
について一緒に考えていただこうと思い、書き下ろしました。
どうぞ、最後までお付き合いください。
内部環境分析とは?
内部環境分析とは、企業内部の資源や能力、組織構造、企業文化などを評価し、強みと弱みを明らかにするプロセスです。これをきちんとやることができなければ、自社の競争力を最大限に引き出すような戦略を実行することは到底できません。
御社がこれまで存続してきたということは、他社よりも優れた点があり、たくさんのお客さまが御社に期待し、選択し、自分たちの課題を解決してきたのです。
これは間違いのない事実です。
一方で業績不振が続いているというのであれば、
1.残念ながら、お客さまの期待を下回ってしまっている?
2.お客さまに御社のサービスの良さが伝わっていないのか?
3.社会の変化にうまく追随できず、お客さまの期待する課題解決方法が提供できなくなっている。
またはずれ始めている
といったことかもしれません。
冒頭の経営者のように、意外に自社のことを自分たちだけで把握するのは難しいことなのだということがお分かりいただけたのではないでしょうか?
私たちは、流行やトレンドの変化、競合の動向など、外部環境の変化に目を奪われすぎることが往々にしておきがちです。外部環境を気にするよりも以前に、内部環境を深く理解し、それを基に戦略を立てることが不可欠です。
よくある事例
私がセミナーなどでよくご紹介する鉄板エピソードで恐縮です。
例えば、駅前にあり、多くの人が待ち合わせで利用するカフェを想像してみましょう。
駅の改札前にあり、入りやすく、ガラス張りで外の様子が見えやすいため、みんなが利用しています。つまり、立地、入りやすさ、改札が見えて、待ち合わせしやすい点に強みがあるのです。
そのオーナーが、店の魅力をアップさせ、売上げ向上を狙うため、客単価をアップさせようと考えたらどうでしょう?うまくいくでしょうか?
オーナーは・・・
・ケーキやジェラート、パスタなどの食事メニューを充実させ
・落ち着いて過ごせるよう内装をシックに改装し
・外の騒音をシャットアウトできるよう、ガラスではなく防音の壁にしました。
確かに落ち着いてドリンクや食事を楽しめるようになりました。
お客さんは増えたでしょうか??
客単価はアップしたでしょうか??
これは、残念ながらNOとなるでしょう。
あなたは、改善策としてどのようなものが浮かびましたか?
王道的には・・・
・待ち合わせがしやすいように目立つ看板や特徴のあるエクステリアとする。
・店名を言いやすいような名前にする。
・ドリンクは、少量・低額にする。
・客席は一人または二人席をメインにし、テーブルなどは小さいものにする。
…などがパッと頭に浮かんだのではないでしょうか?
このように自社の強みがわかっていなければ、お金をどぶにすてるようにこのような的を外した投資や販促をしてしまうのです。信じてもらえないかもしれませんが、実はよくある話なのです。
代表的な分析手法は「VRIO分析」
VRIO分析とは、以下の4つの要素で構成されており、企業の内部資源を評価するためのフレームワークです。
- Value(価値): 資源が市場において価値を提供し、競争優位をもたらすかどうか。
- Rarity(希少性): 資源が希少であり、他の企業が容易に模倣できないかどうか。
- Imitability(模倣困難性): 資源が他社にとって模倣が困難かどうか。
- Organization(組織): 企業がその資源を最大限に活用できる組織体制を持っているかどうか。
具体的な使い方は、1から4までを順に確認していくだけの簡単なフレームワークです。
これらの要素を評価することで、企業は自社の強みを特定し、それを競争優位に繋げる戦略を立てることができます。
そもそも、1.Value(価値)がなければ、誰もそのお店、そのサービスを利用しないでしょう。例えば、食事もお酒も惜しくない居酒屋など成立しないでしょう?つまり、価値は必須なのです。
次に2.Rarity(希少性)です。
価値があっても世の中にあふれているような商品・サービスでは、競争力は低くなります。例えば、長年継ぎ足して開発してきた秘伝の焼き鳥のタレと大手メーカーの市販のタレを使っているお店が並んでいたらどうでしょう?他社との競争にも勝ち残れそうではありませんか?
そして、3.Imitability(模倣困難性)です。
もし、御社の商品・サービスの希少性が高くても、お金があればすぐにマネができてしまうものでは、意味がありません。また、タレのレシピがすぐにマネできてしまうような簡単な組み合わせだとすると、他社と差別化することは難しそうです。
他にも、大将と話すのが楽しみで来る常連さんがたくさんいるのであれば、大将のトークが価値であり、希少性であり、模倣困難性も高い、当社の強みとなりえます。
4.組織については、
文字で書くのは難しいのですが、このようなタレの魅力や大将のトーク力を活かせるような店舗・立地・スタッフなど組織や体制のようなものがそろっているか?が大切になります。
バリューチェーン分析も発想が生まれやすいフレームワーク
バリューチェーン分析は、企業の活動を「価値を生み出すプロセス」として捉え、それぞれの活動がどのように価値を創出し、企業全体の競争力に貢献しているかを評価する方法です。
なんだか難しそうですが、冒頭で書いたように自社の強みは自分ではなかなかわからないため、自社の仕事を細かく分けて、一つずつ丁寧に分析するための方法です
具体的には、
メインのビジネスを
商品企画⇒仕入⇒製造⇒出荷⇒マーケティング⇒販売⇒アフターフォロー
といったように細かく分類します。
それらに加え、支援活動として人材管理、技術開発、財務面などに細かく分類し、各活動の効率性と効果を分析し、どの部分のどの活動が強みがあるのか?改善の余地があるプロセスはどこかを特定する方法です。
例えば、製造プロセスの効率化が競争優位をもたらす場合、製造工程の改善策を講じることでコストを削減し、利益率を向上させることができます。
具体的な方法は?
内部環境分析を効果的に行うためには、データ収集と分析が重要です。例えば、以下の方法があります。
- インタビューとアンケート:
社員や関係者に対するインタビューやアンケートを通じて、現場の状況や課題を把握します。私は、顧客に聞くことをいつも強く推奨しています。みなさん嫌がりますが・・・。 - 財務データの分析:
売上高、利益率、コスト構造などの財務データを分析し、経営資源の配分状況や効率性を評価します。 - ベンチマーク分析:
業界内の他社と比較することで、自社の強みと弱みを相対的に評価します。
例えば、ある居酒屋では、バリューチェーン分析を行い、業務プロセスにおける無駄を削減することで、生産性を20%向上させた事例があります。このように、具体的なデータに基づく分析は、実際の経営改善に直結します。
まとめ
今回は、自社の強みを磨き上げるために必要な内部環境分析について書いてみました。
内部環境分析は、一度行えば終わりではなく、継続的な改善と見直しがとても大切なのです。
(まぁ何においても継続は力なりですが・・・)なぜなら、市場環境や競争状況は常に変化するため、定期的に内部環境を再評価し、新たな課題や機会を発見することが重要です。
これにより、企業は長期的な成功に向けた柔軟かつ効果的な戦略を維持できます。
あの大谷翔平やイチロー選手でも自分の強みをアピールするとともに、日々コツコツと磨き上げています。凡庸な私たちが「うちは、今のままで十分満足や」なんて言っていたら、
「あれ?ここって、前は何のお店だっけ?!」なんてことになりかねませんね。
ぜひ、勇気を出して、お客さまに聞いてみましょう。
「どうして、よそではなく、うちを贔屓にしてくれているの?」
「もし、知り合いに紹介してくれるとしたら、どんな風に紹介してくれるの?」
もし、よかったら、今度お会いした時にでも、私の良いところを教えてください。
(ちょっと怖いけど・・・)
堺経営ラボand next
中小企業診断士
山本 哲也