最終更新日:2024/09/04
みなさんこんにちは!
大阪堺で「経営のモヤモヤをワクワクに変える!」をビジョンに、みなさまのちょっとした変化を応援しています。中小企業診断士の山本哲也です。
本日は、私のこだわりの名刺を制作している大和板紙株式会社についてご紹介します。大和板紙株式会社は、大阪府柏原市に本社と工場を構えている創業72年目の老舗製紙メーカーです。
それまでの私は、ネットプリントの会社に「一番安くて早く届くタイプの名刺」を発注していました。
大和板紙さんとのご縁は、環境対応型設備の導入に際して、パートナーコンサルティング会社と共にご支援させていただいたことから始まりました。
その支援の際に大和板紙さんのすごい技術や、たくさんの魅力的な製品の存在を知ったことが、名刺をお願いすることになったきっかけなのです。
今回のコラムは、「私はこんなすごい会社に名刺をお願いしているんですよ!」と自慢するため!ではなく…(笑)
こちらの会社がいかにサステナブル経営を実践されているか、お手本企業として皆さんに知っていただきたく書いております。どうぞ最後までお付き合いください。
どんなすごい名刺用紙か?!
この写真が、大和板紙さんに特別に制作してもらった名刺で、SDGs・サステナブル経営関連の方とのご挨拶専用です。
一見わかりづらいのですが、この名刺には特別な再生紙が使用されています。この再生紙は処理が難しいため可燃ゴミになってしまうようないわゆる紙ごみから、アップサイクルされたものなのだそうです。
さらに、その高い技術を応用してラグビーの聖地である花園ラグビー場の天然芝を紙ごみに加えて製造しているらしいのです。
そのストーリーが素敵だと思いませんか?
よく見ていただくと、あちこちに小さな異物が見えると思います。
あちこちで名刺交換をする際、このエピソードをお伝えしていますが、その反応はさまざまです。
「ラグビーをしていたんですか?」
→やっておけばよかった…
「へー。大丈夫ですよ。気にしないです。」
→いやいや、そうじゃなくて…(;^ω^)
サステナブルな所に驚いて!
「すごい!エコ、サステナブルですね!!どこで作っているんですか?!」
→やったー。いいでしょこれ?!
この反応を期待していたのです!
人は皆、それぞれ違う価値観のアンテナを立てているのだと改めて再認識しました。そして、まだまだサステナブル経営の広報活動が必要だと痛感いたしました。
さて、私たちが推進しているサステナブル経営のお手本企業である大和板紙とはどんな会社なのでしょうか?みなさまにご紹介するため、経理・総務部課長の桑原拓也さんと営業部部長代理の寺村卓さんにお話を伺ってまいりました。
「紙ごみゼロの世界を目指す」大和板紙株式会社とは?
初めて工場に訪問させていただいた日が、たまたま非稼働日でしたので、原材料の受け入れから出荷まで、製造工程の全体を見学させていただくことができました。
製紙工場の見学なんて生まれて初めてですし、製紙工場は北海道、静岡、四国あたりにあって、大規模操業をしているイメージがありました。
大阪府内にしかも駅徒歩5分の場所にあることにまず驚きました。
工場内は、モノづくりが専門ではない私にも理解しやすいほど、非常に効率の良いラインや設備設計がされており、導線にまったく無駄がありませんでした。狭い敷地を利用して、いかに効率よく生産するか?ということを考え抜いた結果とのことです。
紙を作る工程ではたくさんの水を使うそうなのですが、その水も、外部からの取水量を減らすため、自社内で排水処理を施し、再利用しているとのこと。製紙業界ではそれほど珍しくない手法なのだそうです。一方で、以前、私は、クリーニング業の会社に勤めており、大量の水のお世話になっていた身としては、とても参考になるお話でした。
高い評価を受けている大和板紙のユニークさ
実は、私たちが知らなかっただけで、大和板紙はすでに各方面から高い評価を受けています。
・2022年には「令和4年度気候変動アクション環境大臣表彰」を受賞
この賞の受賞企業は大和ハウス、JR東日本、東急不動産、LIXIL、ダイエーなど、有名企業が並んでいます。
・2023年には公益社団法人中小企業研究センター主催の
「第57回グッドカンパニー大賞、特別賞」を受賞。
これら以外にも多くの表彰やメディアの取材を受けています。
これらの受賞履歴からも確かにすごい会社のようですが、彼らが作っている板紙とはどんな製品なのでしょう?
板紙とは?
ところで、そもそも板紙(いたがみ)とはあまり聞き慣れませんがどのような紙かご存じでしょうか?
「板紙」とは厚紙のこと なのです。
恥ずかしながら、私は、「厚紙」って単なる厚みのある紙の総称だと思っていました。大和板紙では「色がついた板紙」や「強度のある紙」など、0.3mm~1.5mmの厚みで様々な特徴があるユニークな板紙を製造しています。
もちろん、そのほとんどの製品が、古紙配合率が非常に高い再生紙です。
古紙とは、普段も廃品回収などでお世話になっており、身近な言葉だと思いますが、”損紙”や”難処理古紙”とは何かをご存じでしょうか?
損紙とは、印刷工程の中で生じた何らかの原因によって、印刷物(商品)を作るのに不適当な状態となってしまった印刷用紙のことを損紙(そんし)と呼ばれています。いわゆる端材ですね。
また、 破れがなまって通称ヤレとも呼ばれているそうです。 損紙は白ヤレ、刷りヤレ、裏白紙に分類できるのだそうです。
一方で、難処理古紙とは、牛乳パック、お酒や調味料の紙パックなどビニールコーティングがされていたり、注ぎ口がプラスチックになっているものを指します。
チラシやコピー用紙のように簡単には再生できず、高い技術力や設備が必要になるそうです。つまり、その技術こそが、大和板紙の製品づくりの秘密なのです。
大和板紙のユニークな製品とは?
ここからは、「彼らは、いったい、どんなすごい製品をつくっているのか?!」「それは、どれほどすごい製品のか?!」について具体的にお話したいと思います。
再生紙は、コピー用紙やティッシュなどの普通紙と板紙に大きく分類されます。そして、板紙の8割は段ボール、残りの2割が、彼らの得意分野なのです。とてもニッチ分野と言えそうです。
つまり、彼らは、処理の難しい紙ごみになるような材料から板紙を作り、さらには、高いデザイン性を持たせ、商品パッケージや書籍の装丁などの最終製品に加工しているのです。
実は私のお気に入りのこのノートの表紙。
「大和板紙の製品だと思います」とのことでびっくりでした!
「単なるエコ」や「コスト低減」というお話ではありません。
バージンパルプから作った真っ白の紙ではできない、大和板紙の高い技術力だからこそできる、個性の演出や各ブランドのアイデンティティ表現なのです。
また、板紙の持つ風合いや色から、デザイナーさんが刺激を受け、あらたな商品制作のチャレンジをするケースも多いのだそうです。
まさに”価値の共創”ですね!
例えば、下の写真の什器たちは、大和板紙の再生紙から創った段ボールでできていす。
段ボールの構造はみなさんご存じだと思いますが、通常だと中身の波型の部分は、クッション性を持たせるために薄い紙を使用しています。
ところが、この商品は、中身の部分も白く堅いのが特徴です。このように製作することで、固くて強度が高く、風合いのある段ボールが出来上がります。こちらは、牛乳パックなどのフィルム加工されている処理の難しい古紙から作る「ミルダン」という製品が使われています。
この特徴を活かし、ディスプレーや椅子など、いわゆる家具と言われる分野にも活用がされています。近い将来、プラスチック製品の大半がこのような再生紙、板紙に置き換わることを想像するとワクワクしますね。こちらは、丸一興業さん(尼崎市)との協業なのだとか。
PAPER NEW WAVE
『PAPER NEW WAVE』は、大和板紙のコーポレートスローガンです。
私たちは
これからもクリエイターのアイデアの発端になる
唯一無二の板紙を作り
その1枚から
時代に大きな波を起こしていきたい。
「古紙・損紙・難処理古紙を含め、あらゆる廃棄物をリサイクル&リユースし、再生紙へと生まれ変わらせることで数十年、数百年後も必要とされる企業であるべく、社員が一丸となってさらなる飛躍を目指します」
と自社サイトで大きく宣言されています。
一方で、大和板紙はただ単に高い技術で何でも再生するだけの会社ではありません。
ここまでご紹介したように、さまざまな色や風合いの板紙が顔をそろえた充実のラインナップに定評があります。既存商品の製造に加え、お客様のご要望に応じて、さまざまな廃棄物からオリジナルペーパーや紙製品を作っています。
具体的には、色や風合いなど豊富なバリエーションが細かく設定されており、約70種類以上の板紙を製造しています。
「表裏の色が違う板紙」
「芝や木の樹皮を混ぜ込んだ板紙」など、
板紙には1枚1枚さまざまなストーリーがあります。
「作り手に寄り添った製紙会社でありたい」という思いから、デザイナーさんとの板紙づくりも行っています。
「どのような紙が使いやすいか」
「何が流行っているのか」など、デザイナーさんと意見を交わしながら、新たな1枚を生み出しているうちに、このような豊富なラインナップになったそうです。
私の名刺もその一つというわけです。
なぜ、大和板紙は、サステナブルにこだわるのか?
私たちの身の回りにたくさんあるような紙と言えば、どんなものを思い浮かべますか?
コピー用紙、ティッシュ、新聞や雑誌ではないでしょうか。
そのような大量に必要となる商品は、やはり、大規模設備での大量生産が適しており、それは、大手企業の独壇場となります。これは、みなさんの作っておられる商品・サービスにも共通するのではないでしょうか?
大和板紙は、みなさんの身の回りの紙を大量生産している大手製紙会社と比べるととてもとても小さな存在です。この小さな会社が、小さな設備をフル活用して、特長的な商品を世に送り出しています。しかも、世の中の課題を解決しつつです。ここにサステナブル経営のヒントが隠されていますし、素晴らしいお手本企業だと思います。
このように、私たち中小企業が、今後も長く活躍していくためには、大企業ではやらない・できない、ニッチな市場を狙い、かつ、自分たちにしかできないような、付加価値の高い商品・サービスを提案することが重要なのです。
これは、きっと、どの業界にも共通して言えることだと考えます。
彼らは、他社がごみとして捉えて、取り扱わないような処理の難しい古紙を扱い、かつ、原材料の風合いを生かした付加価値の高い商品を世に送り出しているのです。
素晴らしいですよね。
まとめ
大和板紙は、これまで長年続いてきた大量生産・大量消費の社会に問題提起をし、紙をゴミではなく資源にすることを提案しています。
そしてそれが、他社との間に大きな差別化、付加価値を生み出しています。
顧客、取引先から支持されることを通じて従業員の自信や誇りが持てる。また、地元からも愛され、社会からも必要とされ続ける真のサステナブルな企業になのだと改めて感じました。
私たちも負けてはいられません。
明日からとは言わず、今日から
自分たちに何ができ、何をすべきか一緒に考えましょう!!!!
ワクワクしませんか!もし、よかったら、私も誘ってください。
堺経営ラボand next
中小企業診断士
山本 哲也