最終更新日:2024/09/18
みなさんこんにちは!
大阪堺で「経営のモヤモヤをワクワクに変える!」をビジョンに、みなさまのちょっとした変化を応援しています。中小企業診断士の山本哲也です。
このコラムは、商工会議所さんからのご相談がきっかけになっています。
1:そもそも、どの商品・製品・サービスの利益が一番多いのか?についてなんとなくしかわかっていない。
2:営業担当は「案件獲得」だけを意識して見積もり作成している。
3:みんな一生懸命頑張っているのに、お金が残っていかない。
こんな経営者や経営幹部が増えており、
どうすれば、彼らのお悩みを解消するためのヒントが得られるようなセミナーをして欲しいとのリクエストがありました。
価格は、自分たちの作り出した価値を定量的に表現するツールです。
まずは、自分たちを褒める気持ちで設定したいものです。
価格改定できない企業 ”あるある”
1「そもそも、どの商品・製品・サービスの利益が一番多いのか?がなんとなくしかわかっていない」
確かに、工場で小ロットの受注生産を組み合わせて製造していたり、設備工事やハウスクリーニングようなサービスで、一日にたくさんのお客さんを回ったりなんかすると
いったい、案件単位、商品単位での儲けが分からなくなってしまいがちです。
また、
2「営業担当は「案件獲得」だけを意識して見積もり作成している。」
営業担当の多くは、「受注・売上」を仕事の目的としてしまっています。自分のお給料は、粗利から出ていると言うのに・・・
彼らのロジックは、こうです。「我々の仕事は、受注してなんぼです。売上がなかったら利益は生まれませんので・・・」
前例主義や相場を強く意識するあまり、儲かるかどうかや、収益率への意識は低かったりします。「仕事は、段取りよく進む」という希望的観測で、見積もりをしているため、アクシデントや製品不良の発生などは加味しません。営業時代の私がまさにこんな感じでしたww
御社の営業担当さんはいかがでしょうか?
これでは、収益性が高まるはずありませんよね。
3「みんな一生懸命頑張っているのに、お金が残らない。」
そして、最後はこれに行き着く。
価格設定と従業員との関係
話は変わりますが、もし、御社の商品・サービスに設定された価格が
「提供している価値に見合ってない。不満だ」と考えているのなら、
すぐにでも価値に見合ってると思える価格に変更した方が良いでしょう。
なぜなら、自分たちの商品・サービスの価格が自分たちの価値に見合わないとすれば、それは必ず製造やサービス提供を担当するスタッフに伝わります。すると、どうでしょう、なぜか、価格に見合った価値や、価格に見合った納期に落ちてしまうのです。
「この価格ならこんなもんでしょ」
無意識のうちにそんな風に身体が動いてしまうのです。
これは、私の実体験のお話なので、特に強くお伝えしておきます。
特に工事やハウスクリーニングなどのサービス業においては、スタッフのモチベーションは、品質や納期に直結します。だからこそ、重視してほしいのです。
自分たちの提供している価値が、価格ときちんとつりあっているかどうかは、しっかると確認すべきです。
もし、自分たちの商品・サービスに自信がなくて
「値段は上げて欲しいけれど、きっと、取引停止になりそう」と感じるのであれば、
それは、価格交渉の前に付加価値の向上に努めるべきです。
国や世論は中小企業の味方です!
とはいえ、近年は、商品・サービスの価値に対して、顧客から受け取るお金が足りないなぁと感じている企業が大半だと思います。
その背景には、エネルギーや配送コスト、人件費など原価が軒並み上昇しており、それは、見積もりの想定範囲を大きく超えているからです。
間違いなく、前回の見積もりから大幅に上昇しているはずです。そして、今後もさらに上昇し続けると見通されています。
では、私たちはどうすれば良いのでしょう?
答えは簡単。
「商品、サービスの価格にエネルギーや配送費、人件費などの上昇分を加味して再度見積もりする。」ですよね。
「そんな簡単な話ではないよ!これだからコンサルは・・・」と言うお叱りの声が聞こえてきそうです。
決して、簡単なことだとは考えているわけではありませんが、今は、値上げの絶好のチャンスだとは考えています。
なぜなら、国をはじめ世論が中小企業の味方をしているからです。
特に国は、物価と賃金を同時にアップさせたいと考えています。なぜなら、安定的な物価の上昇が景気回復に不可欠と考えているからです。この春には、大企業に対して賃金を引き上げるような異例の要請をしているニュースはご覧になられたのではないでしょうか?
また、中小企業で働く人たちの賃金が上がらないことを問題視しています。そのため、その背景にある中小企業の収益力アップを支援するための補助金をじゃぶじゃぶ提供したり、大企業に対して、下請け価格をアップするように要請しています。
不誠実な大企業にはペナルティも
国の働きかけのポイントは、3つです。
>価格交渉を拒否することなく応じること。
>中小企業担当者が示した根拠が合理的であれば、価格変更も了承すること
さらに、大企業側から中小企業に対して
>「価格交渉の必要性は無いですか?や、価格はこのままで大丈夫ですか」と親切に声をかけること。
国は、これらの要請が、看板倒れにならないために、不誠実な対応をしているような企業の名前を公表するといったペナルティーも用意しており、実際に今年(2024年3月)約200社の大企業の社名を公表しました。
ある大手の自動車メーカーの社長が記者会見を開き、
「下請け中小企業に対して不当な対応をしていました。ごめんなさい。」というお詫びのニュースは記憶に新しいところです。
一方で、我々中小企業には、「根拠に基づく価格転嫁を提案すること」を要請しています。
つまり、「いつまでも我慢していてはだめですよ」と国も本腰を入れ始めたと言えるでしょう。だからこそ、いま、私たち中小企業も勇気を出して、価格交渉に当たるべきタイミングだと考えています。
もう限界は超えている
大企業だけが一方的に悪いのでしょうか?
そんなことはないですよね?
これまで、私たちも大企業にとてもお世話になってきました。
例えば、
・支払いサイトが短く、遅滞なく支払ってくれる取引先
・研究開発を支援してくれた取引先
・創業当時の苦しい時期を支えてくれた取引先
まだまだいろいろとドラマもあるのではないでしょうか?
「いろいろなコストがアップしてるから、値上げさせてくれ」と簡単には言えないですよね。
まじめで誠実な経営者ほど「まだまだ、自社側にコストカットの努力の余地があるのは?」と考えるものです。
しかし、その努力も、もう限界を超えているのではないでしょうか?
次に起こること
今後もこれまで通り、我慢に我慢を重ね従業員さんにも
「黒字になったらきちんと払うから、もうちょっと我慢して」とお願いし続けますか?
冒頭でも少し触れましたが、このあとのシナリオについて、私は、こんな感じではないかと考えています。
1.どれだけ頑張っても売上げは上がらず、待遇改善の原資が得られない。
2.従業員さんの給料などの待遇が改善できず、大企業はもとより同規模の中小企業から見ても落ち目な状態になる。
3.従業員さんのモチベーションは下がり、早晩、嫌気がさして、転職してしまうでしょう。
つまり、このままコスト上昇を価格に転嫁できずに、経営が悪化すれば、いずれは商品・サービスの安定供給ができなくなるのです。
そして、その時困るのは、我々中小企業だけではなく、部品の仕入れができなくなる元請け大企業もなのです。
だから、様々なコストの上昇分を価格に反映させ、中小企業が適正な利潤を得るのは、我々中小企業のためではなく、元請け大企業のためにもなるのです。
このあたりのことをきちんと、元請け大企業の購買担当や経営者に理解しやすいように説明するのが、我々中小企業の役割だと思うのです。
以下のお話は価格設定のお話からは外れているように思えますが、価格の見直しを先送りしてしまうと、実は以下のようなことも起こりうるのです。
嫌気が差して辞めた従業員はどこに転職するのでしょう?
すでに価格転嫁が完了し、従業員さんの待遇改善に取り組んでいる同業他社に行くのではないでしょうか?
そして、御社で培った技術やスキルを活かし、転職先では、高いモチベーションで大活躍するでしょう。
そうなれば、その企業は、活性化し、御社の大きなライバルにまで成長する。
にわかには信じたくはないと思いますが、ありそうな話ではないでしょうか?
ひとまず今回はここまでにして、次回は「価格見直し」の具体的な手順をお知らせします。
まとめ
「値上げします!」言いにくいですよね・・・わかります。
しかし、市場、価格は変化するものです。変化して当たり前のものなのです。
変化を受け入れ、対応していかないと、気づいた頃には手遅れとなる様々な影響があります。
とはいうものの
どーしても、難しい!助けてほしい!
そんなとき、ぜひお力にならせてくださいね。
堺経営ラボand next
中小企業診断士
山本 哲也