最終更新日:2024/10/01
みなさんこんにちは!
「経営のモヤモヤをワクワクに変える!」をビジョンに、大阪堺でみなさまのちょっとした変化を応援しています。中小企業診断士の山本哲也です。
近年、M&Aに関するトラブルに関するニュースをよく目にするようになりました。その理由には、大きく二つあります。
1つは、経営者の高齢化対策として、国がM&Aを積極的に推進しており、中小企業でも活発になっていること。
次に、ビジネスチャンスを見出し、新たに異業種・異業界から参入する企業が増えていること。(本コラムは、2024年9月制作です。最新情報については、経済産業省のサイトなどをご参照ください。)
次期経営者不在で廃業する企業が多数存在
年々進んでいた経営者の高齢化はようやく落ち着いてきていますが、それでも後継ぎのいない企業はまだまだ相当数あり、廃業がますます増加する傾向にあります。
日本商工会議所の調査(2023年)によると、中小企業の22.3%が後継者不在。つまり、みなさまの周りにある地元企業の5社に1社が後継者不在。
全国ですと、中小企業が約330万社ですから、73.6万社に廃業の可能性があるということになります。これらの企業中には、黒字の企業も少なくありません。
出所:日本商工会議所2024年3月調べ
このあと、どのようなシナリオが待っているのでしょうか?
将来の見通しが立たないため、新たな投資もしづらく、徐々に収益性が低下、いずれ赤字に転落し、廃業。従業員は転職を余儀なくされます。もし、他業界に転職するようなことになれば、それまで培った経験や技術は社会で活かされることなく個人の中に留まり、いずれ、消滅してしまうでしょう。
取引先はと言うと、新たな取引先の開拓など、自社で調達する努力が必要となり、余計な仕事に時間を費やすことで、生産性低下となります。いずれも日本のパワーがダウンするお話ですし、法人税の減少に繋がるような状況が想定されます。
打開策としてのM&A
このような背景があり、M&Aによる引継ぎが注目を浴びています。
後継者がいないため黒字にも関わらずの廃業や、徐々に活力を失っての廃業もあります。働く場所がなくなってしまうだけでなく、貴重な技術の伝承がストップしてしまうなど社会全体の問題になっています。
この社会課題を解決すべく国もさまざまな支援策を展開しています。
例えば、「事業承継引継ぎ補助金」
その内容は、毎回ブラッシュアップがされるため、その都度新しい情報を確認する必要がありますが、概要は、次のとおり。
・事業を途絶えさせないため、M&Aに関する取り組みに必要な費用を支援。
例えば、バトンズやトランビなどのM&Aマッチングサービスに登録する費用や専門家の費用が該当します。
・事業承継を契機に新たな取り組みに着手する事業者に対する支援
例えば、事業承継を機会にした設備投資やビジネスの見直し、また、新しい事業を開発などに必要な投資に対して補助金による支援があります。
・事業や会社を譲渡した後の処理費用を支援
たとえば、事業承継した相手(新経営者)から不要とされた在庫や、賃貸オフィスや店舗などの原状復帰に関する費用が該当します。
補助金を申請する前の段階にある事業者に対しては、
「事業承継・引継ぎ支援センター事業」などの相談窓口を設置し、無料で何度でも相談のできるような体制を整えています。
M&Aビジネスは成長分野?!
上述の通り、課題を抱えている事業者がたくさんあり、国も手厚く対応しています。このような背景をビジネスチャンスと捉える人たちも増えています。
代表的なものは、マッチングサービスです。
一部のサービスは補助金の対象にもなっていますが、M&Aでは、会社を売りたい企業と買いたい企業が出会う必要がありますが、その出会いを支援するサービスです。
システム構築をメインのビジネスとしているような企業にとっては、マッチングサービスのサイト構築や運用は、それほど難易度の高い事業ではないようです。
他にもさまざまな事業者の参入があります。
一方で、今、まさに急成長をしている市場ですので、トラブルもあり、注意が必要です。
監督官庁が公表しているトラブル事例を見ていると、トラブルの多くは、マッチングサイトに関するものではなく、実際にM&Aをスタートしたあとで発生しているようです。
「契約通りの支援が受けられなかった」
「そもそも、契約で決めていなかったことがたくさん発生した」
「売り手企業の借入金の保証人を外してもらえなかった」など。
国は、「事業者選定を慎重にすること」や、「公的機関の活用」をして自衛して欲しいとPRしています。
国も対応に本腰を入れ始めました
国もこのようなトラブル発生が、重点テーマの推進を阻害することがあってはならないと考えており、積極的な対策を実行しています。
例えば、その一環として、M&A業務を行う事業者の登録制度を設置し、監視体制の強化を始めました。
それが、「M&A支援機関登録制度」です。もちろん当社も登録を済ませております。
この登録制度のサイトによると・・・
「M&A の基本的な事項及び手数料の目安や適切なM&A のための行動指針を提示した「中小 M&A ガイドライン」の理解及び普及を促し、中小企業が、培ってきた貴重な経営資源を将来につないでいこうとする際、より一層円滑にかつ、安心してM&A を手段の一つとして選択できる環境の実現を目指します。」
と制度の趣旨を示しています。(URLは最後のところに記しておきました。ご覧ください。)
まとめ
国は、中小企業がもっと一般的にM&Aを利用しやすい環境にするためには、仲介事業者や私たちのようなFA(フィナンシャル・アドバイザー)がしっかりと機能することが重要と考えています。
そのため、いろいろなルールを整備したり、上述の補助金の活用に対してもこの「M&A支援機関登録制度」に登録している事業者に限定したり、と対策を講じています。
次回は、この仲介事業者やFAに関する情報提供をさせていただこうと考えています。
まだまだ、トラブルの多いM&Aですが、その要因は、ビジネスライクで不誠実なM&Aの支援会社の存在ではないかと思います。とは言え、悪意のある事業者ばかりではありません。誠実に対応している事業者やしっかりとした大手コンサルティング会社もあります。
もし、
「M&Aってなに?」
「事業承継について考えてみたい」など
なんらかの不安やわかりづらいことがおありでしたら、どうぞお気軽にご相談ください。
御社にとって一番よい解決策について一緒に考えさせていただきますし、必要に応じて公的機関へのご紹介もいたします。
今回の記事内での情報の詳細サイトは以下より御覧ください。
M&A支援機関登録制度WEBサイト
事業承継引き継ぎ支援センター
堺経営ラボand next
中小企業診断士
山本 哲也