みなさんこんにちは!
大阪堺で「経営のモヤモヤをワクワクに変える!」をビジョンに、みなさまのちょっとした変化を応援しています。中小企業診断士の山本哲也です。
今日は、新規参入が増えているハウスクリーニング事業を題材に、マーケティングにおいて最も重要なテーマの一つである「差別化」について考えてみたいと思います。
「差別化」という言葉は、多くの経営者にとって耳慣れたものでありながら、いまいちピンとこないと感じている方も多いのではないでしょうか。
経営学者フィリップ・コトラーは、「差別化とは、製品やサービスに独自性と価値ある特徴を付加することである」と述べています。
簡単に言えば、「顧客が自社の商品やサービスを選ぶ理由」を作ることです。
差別化のポイントは多岐にわたりますが、具体例を挙げると以下のようなものが考えられます。
- ・サービスの特長:他社にはない特別な技術や品質を提供する。
- ・顧客対応:きめ細かい接客や、他社では体験できない優れた対応を行う。
- ・会社全体の姿勢:地域密着型の取り組みや、信頼を重視した経営スタイルを打ち出す。
これらのいずれもが差別化ポイントになりえます。
極論すれば、他社との違いがあれば、決して優れている必要はないのです。特に、ハウスクリーニングや家事代行のような大手企業とも戦う必要があるサービス業を展開しておられるみなさまには、常に頭の隅から離れないようにしていただきたいです。
差別化の重要性とは?
ハウスクリーニング事業は、参入障壁が低いため競争が激化しやすい業界です。同じ地域内に複数の業者が存在することも珍しくありません。このような市場環境下で成功するためには、競合他社には提供できない「自社ならではの価値」を明確にし、それを顧客に伝えることが重要です。
一方で、低価格路線や大手との差別化は簡単なことではありません。特に、人件費が主なコストを占めるハウスクリーニング事業では、価格競争には限界があります。だからこそ、価格以外の理由で選ばれる存在になることが求められるのです。
セミナーでこのようなお話をすると、「うちは、他社より低価格です」や「うちは小規模零細だから大手と違いなんてつけられない」という発言をよく聞きます。みなさんは、これらの発言についてどのようにお感じになりますか?
差別化の基本的なアプローチ
ハウスクリーニングの場合、そもそも価格は、重要な差別化要素にはなりえません。なぜなら、コストの大半が人件費であり、これは、大手も零細も同じだからです。一方で、夫婦や家族だけの自営、かつ、将来の発展性を考えていないのであれば、やや有利かもしれません。このケースは、極論になるため、本コラムでは除外して考えましょう。
差別化を考えるための基本的な視点を考えてみました。
- 1:製品・サービスの差別化
競合では提供できないような機材を使ったり、競合が提供しない特殊な場所やあえて訴求していないサービスを訴求することなどが考えられます。例えば、子ども専門の歯科やインプラント専業の歯科などがこれに当たります。 - 2:顧客体験の差別化
例えば、他社が効率を重視して行わないような丁寧な説明や、顧客を特別扱いするようなサービスが提供できれば、顧客体験の差別化ができます。例えば、一日一組だけのレストランのような貸し切りサービスなどがこれに当たります。 - 3:ブランド価値の差別化
地域密着型で温かみや安心感のあるブランドを活用したり、一から構築したりすること。つまり、これまで他のビジネス展開で認知を得ているブランドを活用することもできそうです。例えば、自治体が新しい取り組み(移動図書館や高齢者サービスなど)を行えば、実績がなくても信用してしまいますよね?
これらの視点で自社のビジネスを見つめ直すことで、価格だけではない「選ばれる理由」は無限に発想することができるはずです。
とはいえ、あまり難しく考えないでください。
長い時間をかけさえすれば、差別化は必ず達成できるのですから。気長に、ただしコツコツと取り組むことが最大の差別化要素です。時間は、誰にとっても公平に有限で、お金で買うことはなかなかに難しいからです。(実は、時間もお金で買えますね。そのお話は、また次回以降にしましょう)そもそも、同じ地区に他社がなければ、それだけでも「地元唯一の〇×屋さん」と言えるわけですから。
ハウスクリーニング事業における差別化ポイント
ここからは、ハウスクリーニングに絞って考えてみましょう。
まず考えるのは、サービスの差別化ですね。
一般的な差別化ポイントには、特別な洗剤や機材を使用するなどがあります。もちろん、よりきれいになったり、静かだったり、早かったり、プロっぽかったり。などなど顧客のニーズにフィットしていることが最低条件です。逆に、他社が取り組んでいなかったり、あえて訴求していないような視点でサービス内容を絞ることもできそうです。例えば、特殊な材質のカーペットや床材の専門事業者を名乗ったり、天井、屋根、外壁など、普段あまり依頼がないような部位の専門事業者になることが考えられそうです。

次にサービス体験の視点です。
作業に対する安心感を向上させることです。この視点では、ハウスクリーニングなどのサービス業に対する不安感や不信感の払拭を狙います。
家を建てるようなレベルでの丁寧な説明や、事前打ち合わせなどなら簡単にできそうです。また、作業終了後のレポートや何度でも再サービスに応じる充実のアフターケアなども一定のニーズはありそうです。すでに、一般的ですが、カギをお預かりして、旅行中や入院中にクリーニングをしておくなども利便性の観点からサービス体験の向上に位置づけてもよいかもしれません。
ブランド価値を活用した差別化は、
地元の老舗や信頼のある企業に取次店となってもらうなどができれば、ブランド力を得ることができますし、サービス名に地域名を入れるだけでも心理的な効果が高まります。試しに、自社のブランド名の前か後ろに地域の小中学校の名前をつけてみましょう。いかがですか?親しみや信頼感が増す感覚が生まれませんか?他にも、大手フランチャイズに参画することも検討できます。ブランド利用に加えて経営ノウハウやネットワークも得られる良い方法です。
差別化実現をステップで考えよう
ここまで、いろいろな差別化アイデアを考えてきましたが、そもそも、差別化を考える上で大切な最初のステップは、自社の強みを明確にすることです。私たち中小企業は、資金や人材の面で大手企業には到底かないません。だからこそ、独自の強みに注目する必要があります。
零細企業の「強み」とは、「経営者やスタッフの得意なこと・好きなこと、もっと言えば性格など」の中に隠れていると、私は考えています。つまり、自然に身についている少しだけ特別な力とも言えそうです。例えば、早起き、夜更かし、力持ち、優しい、背が高い、几帳面、せっかち、部活(野球、バスケ、将棋)、趣味(ゴルフ、テニス、車好き)などなど。
このような、自然と身についている力と顧客ニーズがマッチするようなものが見つけられれば、きっと誰にもまねのできない、オンリーワンの差別化が実現できるでしょう。

顧客ニーズにフィットしていることは最低条件
ここまで、自社の強みやオリジナリティを探すことを強調して考えてきましたが、先述の通り、顧客ニーズにフィットすることが最低条件になることは言うまでもありません。もちろん、これにも例外があり、顧客も言語化できていない隠れたニーズというものがあります。ただし、今回のテーマから大きく脱線してしまいますので、これも別の機会に考えることにしましょう。
口コミを活用する
すでに、ビジネスを展開しているのであれば、自社のサービスを繰り返し利用してくださっている顧客にインタビューすることをお勧めします。
・「他にもたくさんあるハウスクリーニング業者の中から、当社を選び、そして、繰り返しご愛顧いただいている理由はどんなところにあるのでしょうか?」
・「当社を見つけて、すぐに注文されましたか?何か悩んだり、迷ったりしたことはどんなことですか?」
・「当社に初めてご依頼をいただけた決め手になったことはどんなことですか?」
このような内容でインタビューを行ったり、アンケートを行います。顧客の言葉は、要約して理解せず、一言一句、正確に記録し理解しましょう。もちろん、各社がやっているように、ホームページやSNSに掲載することは、同じようなお悩みを持っている顧客へのアピールにもつながります。

クレームを活用する
クレームは、嫌なものです。しかし、マーケティングの観点からは、とても有用なモノです。なぜなら、クレームは顧客の不満や不安の叫び声だからです。
顧客は、微に入り細に入り「〇×してほしい」とあらかじめ指示をしてくれることはありませんが、期待を裏切った際には、はっきりと「〇〇して欲しくなかった。××するなんて信じられない」と不満や要望を言語化してくれます。
差別化ポイントを探るためにあえて、クレームを発生させるなんてナンセンスなことは必要ありません。ネットや匿名SNSなどを検索すれば、山のようにハウスクリーニング事業者への不満の言葉を見つけることができるでしょう。その中から、自社なら普通に対応していることや、自社ならではの解決策が提案できるものを考えてみましょう。きっと、差別化のヒントが隠されているはずです。
まとめ
差別化は、一朝一夕で完成するものではありません。自社の強みや独自性を丁寧に掘り下げ、時間をかけて育てていくものです。また、顧客ニーズに寄り添い、柔軟に対応する姿勢が、小規模事業者ならではの強みとなります。
まずは、スタッフのみなさんで「差別化」について考える時間をとるところから始めてみてはいかがでしょうか。意外な人物や新人さんが発見してくれることも多いものです。いろいろな人を巻き込んで楽しく、探索しましょう。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。もし、課題やお悩みが解消しないようでしたら、一緒に考えさせていただきたいです。お気軽にご相談ください。