最終更新日:2024/12/25
みなさんこんにちは!
大阪堺で「経営のモヤモヤをワクワクに変える!」をビジョンに、みなさまのちょっとした変化を応援しています。中小企業診断士の山本哲也です。
今日は、1年を振り返るこの時期に多くの組織で行わている、”1on1ミーティング”について考えてみたいと思います。
”1on1(ワンオンワン)ミーティング”は、米国シリコンバレーの企業文化として古くから導入されていました。
日本では2012年にヤフー株式会社が導入したことをきっかけに国内でも広まりました。具体的には、上司と部下が定期的に1対1で話し合う人材育成の手法です。
上司が部下の成長のために時間をつかうことで、部下の能力を高めたり引き出したりすることを目的としています。
多くの経営者が、部下とのコミュニケーションを大切に考えており、形はどうあれ、面談や打ち合わせは頻繁にしておられると思います。
一方で、「そのミーティングは部下にとって、組織にとって、本当に有益な時間でしょうか?100点満点で評価するなら何点でしょう?」と聞かれて
「満点」と即答できる経営者・管理者はいないのではないでしょうか?
その背景には、こんなことがあるのかもしれません。
・1on1を始めてみたが、内容が部下の日常報告に終始してしまい、実質的な成果が見えない。
・部下とのコミュニケーションの場として設けたつもりが、会議の延長のような感覚になっている。
・部下が何を話したいのか分からず、結果的にお互いに気まずい空気だけが残った。
1on1は、従業員の成長を支え、信頼関係を築くための貴重な時間であるはずです。しかし、その目的や進め方が明確でないまま行われると、単なる「形だけ」の行為に陥り、逆に時間の浪費となってしまいます。
本コラムでは、形だけの1on1が引き起こす問題を解説し、それを価値ある時間へと変える方法について掘り下げていきます。これからの1on1をより有意義なものにするための第一歩を踏み出しましょう。
「1on1」逆効果になっていませんか?
1on1は、部下の成長をサポートし、信頼関係を深めるための重要な場です。
しかし、その進め方によっては、逆にモチベーションを下げたり、信頼を損ねたりする可能性があります。
次のような兆候が見られる場合、1on1が逆効果に陥っている危険性があります。
1. 部下が1on1を負担に感じている
部下が1on1を「叱られる場」または「上司に合わせるだけの場」と感じていると、心理的安全性が失われます。このような場では、本音の対話は生まれず、部下のモチベーションを低下させてしまいます。信頼を築くどころか、距離感が広がる結果に陥ることもあります。心理的安全性とは、部下が「自分の意見を自由に発言しても否定されない」「失敗を恐れずに本音を話せる」と感じられる状態を指します。
2. 内容が浅く、実りのない会話で終わる
目的が明確でない1on1は、報告の繰り返しや雑談に終始することが多くなります。このような1on1は、部下にとって価値を感じにくく、上司にとっても「時間を取られるだけ」という印象を持たせてしまいます。
それが継続すれば、1on1の実施そのものが形骸化するリスクがあります。一方で、上司が自分の気づきを優先する場として進行してしまい、一方的に満足しているケースも散見されます。特に優秀な上司・経営者に多い傾向です。
1on1はあくまで、部下の成長のための時間であることを肝に銘じておく必要があります。
3. フィードバックが一方的で部下が成長を感じられない
上司が主導で進め、一方的に指導や評価を伝える1on1は、部下の行動変容につながりにくいだけでなく、時にプレッシャーを与えすぎてしまいます。部下は「言われたことを守らないといけない」という感覚を持ち、結果として主体性が失われます。
価値ある1on1にするための3つの視点
「逆効果」を防ぐためには?
形骸化した1on1や逆効果を生む1on1から脱却するためには、次の3つの視点が必要です。
1. 明確な目的設定
1on1の目的を明確にすることで、部下と上司が同じ方向を向いて話し合うことができます。
以下のような質問を考えてみてください。
部下が現在取り組んでいる課題は何か?
中長期的な目標に向けて、どのような支援が必要か?
具体的には、1on1を次の3つのテーマに分けて進行するのがおすすめです。
振り返り:最近の成果や課題について共有。
目標設定:今後の目標やアクションプランを確認。
成長支援:必要なスキルやリソースについて話し合う。
これにより、会話に目的が生まれ、1on1が生産的な場となります。
2. 適切なプロセスの設計
1on1を価値ある場にするためには、進行プロセスの工夫が必要です。以下の手順を参考にしてください。
事前準備:
部下に話したいテーマを事前に考えてもらい、上司も関連情報を用意します。
傾聴を中心に:1on1の80%は部下が話し、上司は聞き役に徹します。部下が本音を話しやすい質問を意識しましょう。
「最近、最もやりがいを感じた瞬間は何ですか?」
「取り組みを通じて、どんな学びがありましたか?」
記録とフォローアップ:
話し合った内容を記録し、次回の1on1で進捗を確認します。これにより、会話が継続的な価値を持つものとなります。
3. マインドセットの転換
1on1を成功させるためには、上司のマインドセットを「指導者」から「サポーター」に変えることが必要です。部下が主体的に考え、行動できるよう促すコーチング型のアプローチを採用しましょう。
具体的には、以下のようなスキルが役立ちます。
オープンな質問:
部下に考えさせる質問を投げかけます(例:「それを達成するためには、どんな選択肢がありますか?」)。
フィードバックの提供:
部下の行動や成果に対し、肯定的なフィードバックを積極的に伝えます。
心理的安全性の維持:
部下が安心して話せる環境を整え、失敗を恐れない文化を育みます。
実践への第一歩
次回の1on1で、以下を試してみてください。
・部下に話しやすいテーマを事前に伝える。
・会話の8割を部下に任せ、質問やフィードバックに集中する。
・最後に次回の目標を簡単に確認して、フォローアップの計画を立てる。
こうした実践を通じて、1on1は単なる形式ではなく、部下の成長と信頼を築く場に生まれ変わります。
なにも、上司・経営者のみなさんが生まれ変わる必要はありません。
少しだけ、今までより、客観的な視点でミーティングをオフィスの天井から俯瞰して観察し、支援者を演じるような気持ちで取り組んでみてください。
もし、気恥ずかしいようでしたら
「いつもと違う感じでやろうと思うけど、いいかな?」
と事前に部下の同意を得るのもよい方法です。
1on1〜成功例と失敗例
1on1を効果的に活用することは、部下の成長だけでなく、組織全体の成果向上にも直結します。しかし、進め方を間違えれば逆効果になるリスクもあります。ここからは、成功例と失敗例を通じて、実践に役立つ具体的なポイントを見ていきます。
1. 成功例:主体性を引き出した1on1
ある企業の中間管理職Aさんは、部下Bさんと定期的に1on1を行っていました。以前の1on1では、Aさんが指導やアドバイスを一方的に行う形だったため、Bさんの受け身の姿勢が目立ち、成長が見られませんでした。
しかし、コーチング型の1on1を導入した結果、大きな変化が起きました。具体的には以下のような工夫をしました。
オープンな質問:「今一番改善が必要だと考えていることとは何ですか?」と尋ね、Bさん自身の考えを引き出した。
ゴールの共有:短期的な目標(次回のミーティングまでに取り組むタスク)と長期的なキャリア目標を明確にした。
フィードバックと感謝:「先日の商談では、結構チャレンジグな提案をしていたね」と具体的に伝えた。
フィードバックとは、単に部下を褒めたり、注意したり、評価を伝えることではありません。フィードバックは、相手の行動や成果について具体的な情報を共有し、自己認識や改善を促すための対話的なプロセスです。
ちょっとわかりづらいですよね。また、次回以降、フィードバックだけをテーマに取り上げたコラムを制作しようと考えています。
このような1on1を継続した結果、Bさんは自ら行動計画を立てるようになり、チームの中で自主的にリーダーシップを発揮するまでに成長しました。
2. 失敗例:形だけの1on1が招いた信頼の損失
一方、別の企業のリーダーCさんは、形骸化した1on1が原因で部下Dさんとの信頼を損ねてしまいました。
問題点:
・Cさんは会議の延長のように1on1を使い、Dさんに業務の進捗報告を求めるだけだった。
・時間の都合で毎回短縮し、Dさんの話を十分に聞くことがなかった。
・指摘や改善案ばかりで、Dさんの意見や気持ちを無視していた。
結果:
Dさんは「どうせ自分の意見は聞いてもらえない」と感じ、1on1への意欲を失いました。最終的に、Dさんは他部署への異動を希望し、チームのパフォーマンスも低下しました。
実践へのヒント:成功に学ぶ要点
1on1を成功させるためには、次の3つを意識しましょう!
■聞き役に徹する:
部下の話に耳を傾けることで、信頼関係が築かれます。
■フィードバックは具体的に:
部下の行動や成果を具体的に認めることで、モチベーションを引き出します。
■時間を確保する:
1on1の価値を高めるために、準備と時間をしっかり取ることが重要です。
まとめ
1on1は、単なるミーティングの一部ではありません。
部下の成長をサポートし、信頼関係を築き、チームの成果を引き上げるための重要な手段です。しかし、その価値を引き出すには、目的を持ち、適切なプロセスを設計し、サポーターとしてのマインドセットを持つことが不可欠です。
明確な目的設定:1on1の時間を、「何のために使うのか」を明確にすることで、価値ある会話を実現します。
適切なプロセスの設計:計画的な準備と進行により、部下が主体的に話し、行動を促す場にします。
心理的安全性の確保:部下が本音で話せる環境を作ることで、1on1の効果を最大化します。
これらの要素が揃えば、1on1は「負担」や「時間の無駄」ではなく、部下にとっても上司にとっても価値ある場となります。
1on1を形だけのものにするのか、それとも未来への投資にするのかは、あなた次第です。以下のアクションを実践してみてください。
1:次回の1on1では、「部下が8割話す」ことを目標に設定してみましょう。
2:対話の最後に、次回までに達成する1つの具体的な目標を部下と共有してください。
3:部下に「1on1をどう感じているか」を率直に尋ね、改善点を見つけるきっかけを作りましょう。
1on1は、短期的な成果を求めるだけでなく、部下と組織の未来を築くための時間です。本コラムで紹介した視点と方法を取り入れることで、1on1をより価値ある場に変えられるはずです。
まずは、次回の1on1から小さな一歩を踏み出しましょう。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
いろいろとポイントをお伝えしましたが、なかなか難しいものです。簡単かつ短期的にできるなら、みんな実践していますから・・・。
気長に取り組みましょう。もし、課題やお悩み・モヤモヤが解消しないようでしたら、一緒に考えさせていただきたいです。お気軽にご相談ください。