みなさんこんにちは!
大阪・堺で「経営のモヤモヤをワクワクに変える!」をビジョンに、みなさまのちょっとした変化を応援しています。中小企業診断士の山本哲也です。
今日は、私たちが一番大切にしている「新規事業開発」に関するお話をさせていただきたいと思います。
新規事業に取り組んでいる方、これから挑戦しようと考えている方、あるいは既存事業の中で新たなチャレンジを模索している方にも役立つ、大切なテーマだと考えています。
いいアイデアなのに、なぜ伝わらない?

新しいアイデアを思いついた瞬間、「これは絶対成功する!」と感じたことはありませんか?
ところが、いざそれを周囲に伝えようとすると、「それって誰のためのアイデア?」「本当に実現可能なの?」「そんなサービスにお金を払う人はいるの?」と疑問や批判にさらされ、ショックを受けることがあります。
でも、まったく心配無用です。新規事業を担当する人間にとって、こうした壁にぶつかるのは、ごくフツーの日常茶飯事です。アンテナを高く立てつつ、鈍感力を発揮して立ち向かいましょう。
偉大な起業家も、例外なく経験する課題なのだと思います。
しかし、一部の成功を収めた起業家はこう考えます。「誰にも理解されないということは、逆に大チャンスだ!」と。
例えば、スティーブ・ジョブズは次のように語っています:
「人々は自分が何を求めているのかを教えられるまで知らない
(People don’t know what they want until you show it to them)」
iPhoneの誕生がその良い例です。
当初、iPhoneに対する反応は否定的なものも多く、
「画面に触れるなんて指紋がついて汚い」
「テレビも見られないなんて信じられない」
と言われたこともありました。
しかし、その後のiPhoneの大ヒットはご存じの通りです。現在では日本のスマートフォン市場の約6割を占めるまでになりました。
他者に意見を求めることで得られる3つのメリット
私は、ジョブズのように世界を驚かせる自信を持つことはできませんでした。ですから、アンテナを立てつつ鈍感力を発揮して、いろんな人に自分のアイデアについての感想を聞いて回りました。聞いて回ることで自分の考えをブラッシュアップすることが癖になりました。
「こんなアイデアがあるんだけど、どう思う?」と意見を求める中で、次のような気づきを得ることが多かったのです。
1:視点の広がり:自分では気づかなかった新たな視点を得られることが多い。例えば、「Aではなく、実際に困っているのはBでは?」という指摘。
2:情報の精査:過去に似た商品やサービスが存在していた事例を知ることで、方向性を調整する。例えば、「それってどこかで聞いたことがあるよ。こんなサービスあるの知ってる?」
3: 自己気づき(オートクライン):他者に話すことで、逆に自分自身の理解が深まる。
「今、話していて気づいたけど……」という経験をしたことはありませんか?まさにこれが「オートクライン」の仕組みで、細胞が自分の分泌物を再び受け取って自分を調節するのと同じように、他人に話すことが自己成長につながるという理論があるそうです。
アイデアが伝わらない3つの落とし穴
良いフィードバックを得るためには、しっかりと正しく相手にアイデアを伝えられる必要があります。ところが、そう簡単なことではありません。以下は、アイデアが伝わらない典型的なパターンです。思い当たることはありませんか?ご注意ください。
1:ターゲットが不明確:誰のためのアイデアなのかがぼやけている場合、説得力を持たせるのは難しいです。対象顧客の生活や課題、背景を具体的に想定することが重要です。
2:熱意が先行し、論理が欠けている:感情的に訴えるだけでは相手に伝わりません。論理的な根拠が求められます。
3: 自分の視点に偏っている:柔軟な姿勢がなく、他人の意見を受け入れる余地がない場合、ブラッシュアップの機会を逃してしまいます。
こうした問題を解決するために役立つのが「コンセプトシート」です。
コンセプトシートとは?

コンセプトシートは、アイデアを「誰に」「何を」「どうやって」提供するのかという視点で整理し、説得力を高めるためのフレームワークです。
・ 誰に?:
年齢、性自認、学歴、職種、住居・職場エリア、通勤手段、スマホキャリア、趣味、好きな食べ物、応援するスポーツチームなどなど
・どのようなニーズ:
現状のAが持つ問題点を改善したい。現状のAでも満足しているが、もっともっと楽しみたい。
・ 何を提供するか?:
顧客のニーズを叶えるベネフィット
・ どう提供するか?:
ベネフィットを体感してもらえるような具体的解決策(この時点では実現できなくてもOK)
・ なぜ私が?:
強みが生かせる。自分や家族がまさに当事者で、このサービスが心から欲しい。
例えばスターバックスの場合:
- 誰に:日常生活に安らぎや特別感を求める都市部のビジネスパーソン。
- どのようなニーズ:リラックスできる空間で、品質の高いコーヒーを楽しみたい。
- 何を提供するか:厳選されたコーヒー豆を使ったドリンクと快適な店舗体験。
- どう提供するか:洗練された店舗デザイン、温かみのある接客、Wi-Fiなど。
- なぜスターバックスが:コーヒー豆の調達・焙煎技術と独自のブランドイメージ。
たたかれることでアイデアは磨かれる

スターバックスの初期の事業は、コーヒー豆の小売りが中心で、現在のようなエスプレッソバー形式ではありませんでした。現在の「サードプレイス」というコンセプトを提案したのは、1982年に入社したハワード・シュルツです。彼はイタリアのカフェ文化に触発され、「家庭でも職場でもない居心地の良い第三の場所」を提供するアイデアを提案しました。
しかし、この提案は当時の創業者たちから否定されます。「豆の小売り」というビジネスモデルから外れることへの懸念があったからです。シュルツは一度スターバックスを離れ、自身のエスプレッソバー「イル ジョルナーレ」を立ち上げます。その成功を経て、1987年にスターバックスを買収し、現在のブランドの礎を築きました。
この背景を振り返ると、コンセプトが否定されることで、逆にアイデアがブラッシュアップされる可能性があることが分かります。スターバックスが世界的に愛されるブランドへと進化したのは、シュルツが他者のフィードバックを受け入れ、アイデアを練り直した結果ではないでしょうか。
コンセプトシートのメリット
コンセプトシートを活用することで、次のようなメリットがあります:
他人の協力を得やすくなります。
例えば、「上司への提案」や「投資家へのピッチ」で活用する際、コンセプトシートを用いることで、話が的確に伝わりやすくなります。シンプルに整理された情報は、相手にアイデアの魅力や価値を一目で理解させる効果があります。これにより、自分だけでは気づけなかった盲点に気づくことができるかもしれません。
また、アイデアの優先順位をつけるためのヒントが得られます。
例えば、コンセプトシートを使えば、どの要素が最も重要かが明確になるため、リソースを効果的に配分できます。「ターゲット顧客が求めているもの」「すぐに解決すべき課題」が浮き彫りになることで、実現可能なプランへとつながります。いろいろな人に受け入れられる部分を優先的に深堀りすることで方向転換も容易になりそうです。新規事業の専門家たちは、これを「ピボット」と呼んで、柔軟性を評価しています。
さらには、議論を建設的にできるメリットがあります。
例えば、チームでアイデアを共有する際、コンセプトシートをベースに話し合うと、各メンバーが共通の理解を持ちやすくなります。「あの部分をもう少し具体化しよう」「このターゲット設定はどう?」といった意見が出やすくなるため、より良い案に磨き上げられます。若年層に高齢者向けのサービスについて漠然と議論をしても良い方向に進むのは難しそうですが、「高齢独居老人の抱えている課題」などと前提条件を明確にすることで、当事者でない人たちの意見も建設的に受け取ることができるでしょう。
まとめ
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
アイデアを形にする第一歩として、コンセプトシートは非常に有効です。他者を巻き込み、成功へと導くためのツールとして、ぜひ試してみてください。その小さな一歩が、未来の大きな成功を生むかもしれません。
なお、私が普段活用しているコンセプトシートのひな形を掲載した書籍を近日発売予定です。詳細はAmazonまたはKindleで発表しますので、ぜひチェックしてください!
それでもなお、課題やお悩み・モヤモヤが解消しないようでしたら、一緒に考えさせていただきたいです。無料経営相談制度をお気軽にご利用ください。