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あなたの企画はどうして“うすく”見られるのか?

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あなたの企画はどうして“うすく”見られるのか?

最終更新日:2025/06/12

「共感される企画」で絶対にさぼってはいけないこと

みなさんこんにちは!

大阪・堺で「経営のモヤモヤをワクワクに変える!」をビジョンに、みなさまの小さな変化を応援しています。中小企業診断士の山本哲也です。

本日は、事業開発や商品企画に欠かせない“顧客理解”について、深掘したいと思います。

ペルソナへの理解が不足している。

新商品や新サービスの企画を立ち上げるとき、多くの方が、ターゲットユーザーの姿を思い描いて「ペルソナ」を設定します。

(ペルソナとは、あなたの商品・サービスを利用する典型的なユーザー像のこと)

例えば・・・

「30代女性、共働き、育児中、ネットショッピングを好む」――どこかで聞いたことがあるパターンですよね。

ペルソナの作り方については、ネットでも書籍でもたくさんの情報があふれていますから、きっと、読者のみなさんも取り組んでいることでしょう。

でもなかなか、うまくいかない。

なぜでしょう?

その理由は・・・

「観察」に基づかない、机上の空論になってしまっているからです。

特に、ペルソナが自分と違う性別や年代、ライフスタイルであったりすると、どうしても想像によるところが多くなってしまいます。

このような机上の空論では、“ペイン”と言われるペルソナの本音に触れることは非常に難しいと思います。

(ペインとは、痛みを意味する英語painです。つまり、ユーザーがお金を払ってでも解決したい課題や問題のこと)

ペインは、行動の背景にある“感情”や“価値観”など、ペルソナ本人すらも気づいていない潜在的な意識に存在するため、想像だけでは捉えることが難しいのです。

自分とは接点のない顧客の真のニーズに迫るには、どうすれば良いのでしょうか?

顧客の本音は「観察」と「会話」の中にある

ペルソナの潜在意識に迫るには、ペルソナの生活に密着して観察する”エスノグラフィー”などの調査手法と、もう少し手軽な”インタビュー”という手法が有効です。

エスノグラフィーは、研究者の領域でもあり、少々難易度が高いため、今回は、もう少し手軽なインタビューについてみなさまと一緒に考えたいと思います。

インタビューにも複数の参加者を集めて座談会形式で意見交換を行う「グループインタビュー」と1対1で行う「デプス(個別)インタビュー」という方法があり、それぞれに以下のようなメリットデメリットがあります。

項目グループインタビューデプスインタビュー
概要複数名(4〜8人程度)で行う座談会形式の調査対象者1人に対し、深く掘り下げて聞く個別形式の調査
メリット– 多様な意見や価値観が引き出されやすい
– 他人の発言に刺激されて新たな気づきが生まれる
– コスト効率が良い(同時に複数名から聴取)
– 深い個人的な本音や心理的背景を探れる
– 周囲の目を気にせず自由に話しやすい
– 複雑なテーマや機微な内容に適している
デメリット– 他人の意見に影響されやすく、本音が出にくいことがある
– 一部の発言者に議論が支配されやすい- 話が脱線するリスクがある
– インタビュー対象者の確保・実施に時間とコストがかかる
– 観察対象が1人なので多様性に欠ける
– インタビュアーの技量によって結果が左右されやすい
向いている内容– 製品・サービスに対する初期反応やアイデア収集
– ユーザー像やトレンドの把握
– 潜在ニーズの探索- 体験談や意思決定の背景を掘り下げたい場合

ふたつのインタビューの特徴を考えると、私たち中小企業のビジネスの現場で手軽に取り入れやすいのが「デプスインタビュー」です。

「デプスインタビュー」といっても、何も特別なことではありません。一言で言えば、想定顧客にお話を聞くだけのことです。

そんな簡単なこと?お感じになったと思いますが、ほとんどの新規事業開発担当者は、これをやれていないのではないでしょうか。

これでは、具体性のない、リアリティに欠ける提案になってしまうのはしょうがないですよね。

そして、もう一つ重要なことですが、インタビューは開発フェーズによって、聞くべきことが変わってきます。

開発フェーズとインタビューの関係

この開発フェーズについては、非常に重要なテーマですので他の記事に任せるとして、大まかには次の通りです。

①ニーズの発見⇒⓶解決策の立案⇒③開発⇒④検証

インタビューは、どのフェーズでも有効なのですが、「①ニーズの発見」において行うインタビューがとりわけ重要です。このフェーズでのインタビューが、開発の成果を決定づけると言っても過言ではありません。

もっとも大切なポイントは、

「正解」を聞き出すことではなく、ペルソナの気持ちがどんな風に動いているか?どんな不満やうれしい気持ちを持っているか?」

です。

多くの担当者がやってしまいがちな失敗はこんな感じです。

「こんな商品・サービスがあったらうれしいですか?」

すでに企画が動き始めており解決策のアイデアがあるため、その解決策についてストレートに聞いてしまうのです。

このように聞いても、多くのペルソナは表面的な答えしか返せません。無理もないことです。

あなたとの関係を壊さないように

「いいですね。そんなのがあったらうれしいと思います。」

「喜ぶ人がたくさんいそうですね」だったり、

「今のままで特に不満はないですね・・・」と正直に答えてくださる方など、

いずれも適当な感じの薄い回答しか得ることができません。

決して、お話をしてくださるペルソナに悪意があるわけではないのですが、彼らは本当にわからないのです。

目の前にあり、手に取るまではわからないのがお客さま

スティーブ・ジョブズの言葉に

「ユーザーは自分の欲しいものは目の前に現れ、手に取るまでわからないものだ」というものがあります。

また、フォードが初めて車を発明する以前の馬車しかない時代のエピソードもあります。

「もし私が人々に何が欲しいかを尋ねていたら、彼らは“もっと速い馬”と答えていただろう。」

「車のない時代に機械でできた馬が欲しい。」なんていう人はいないのです。

では、開発初期フェーズでのペルソナインタビューでは、どのように聞き、何を観察すればよいのでしょうか?

それは、

「なぜそれを選んだのか?」

「どんなときに不満を感じるのか?」

「現状では、どんな解決策を使っていて、そこにはどんな不満があるのか?」

つまり、背景にある“理由”を引き出すのです。これによって、私たちの仮説とのズレを明らかにし、より本質的なニーズに近づくことができます。

事例に学ぶ:本音がわかった瞬間、企画は動き出す

ある食品メーカーが、「忙しく活動する若い母親」向けにレンジで温めるだけで出来上がる健康志向のスープを開発しました。


パッケージはナチュラルカラー、キャッチコピーは「あなたのために時短を、家族のために安心を。」

結果は、・・・予測を大きく下回る結果に終わってしまいました。

インタビューで見えてきたのは、

「レンジで温めるだけは、うれしいが、手抜き感が強すぎる」

「家族のためにひと手間はかけたい。」

という母親が感じていた罪悪感です。

「もうひと手間かけたい」「自分はちゃんと家族に向き合っていると思いたい」という深層心理に気づけなかったのです。


時短よりも「健康」「おいしさ」「家族が喜ぶ」

そして何よりも「良い母親と自分で思える」ことが優先だったのです。

多くの人が誤解しているのですが、ペルソナとは「仮説」にすぎません。

顧客の本音に触れることで、仮説のペルソナは「ホンモノ」へと進化します。

「観察と会話を通じて、想定外の声を拾う」――このプロセスが、あなたの企画を“薄い”ものから“伝わる”企画へと変えてくれるのです。

まとめ:あなたのアイデアをホンモノに変える

インタビューの醍醐味は、「想定外の言葉」に出会えること。

「このキャッチコピーに救われた気がしたんです」
「実は「便利すぎる・時短すぎる商品」って、後ろめたく感じるんですよね・・・」

こうした言葉に出会ったとき、アイデアが一気に前進します。

ペルソナは、最初に“想像”で作るもの、あくまで仮説なのです。

そして、最後にはゴミ箱行きになるかわいそうな存在です。

もしあなたが、「伝わらない企画」に悩んでいるなら、それは顧客の声を聞き足りていないだけかもしれません。

また、そもそも、そのペルソナなどこの世の中に存在しないのかもしれません。

ユーザーの言葉に耳を傾け、背景にある思いや動機を丁寧に拾っていきましょう。

そこにしかない“発見”が、あなたのアイデアを大きく進化させてくれるはずです。

1. 顧客に関する仮説を立てる

2. 実際に観察し、インタビューする

3. 仮説と現実のズレを検証し、企画を磨き上げる

このサイクルを繰り返すことで、顧客に“刺さる企画”が完成していきます。

経営者や新規事業担当者にとって、「観察」と「会話」は最強の武器となるのです。

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それでも、モヤモヤが解消しない場合は、ぜひ、一緒に考えさせていただきたいです。

コラムのご感想や具体的なご相談はこちらから、お気軽にお聞かせください!

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。