みなさんこんにちは!
大阪・堺で「経営のモヤモヤをワクワクに変える!」をビジョンに、みなさまの小さな変化を応援しています。中小企業診断士の山本哲也です。
本日は、事業開発や商品企画の共感者を増やし、社内のコンセンサスを得るために欠かせない“リサーチ”について、深掘りしたいと思います。
直感ではなくデータで市場を読む─失敗を防ぐ「市場リサーチ」の基本
革新的なアイデアほど、仲間の「いいね!」が集まりやすいものです。
なぜなら、実現可能性はさておき、ひとは夢やロマンが感じられるものにポジティブ
な印象を受け、応援したい気持ちが沸き上がるものだからです。一方で、このような
仲間内での反応において気を付けたいのは、あなたの熱意に押された反応であるとい
うことです。
そして、往々にして母数が小さく、市場全体とは少しずれてしまう可能性が高まります。このようなリスクはできれば避けたいところです。
そのために、やっておきたいことが今日のお話の本題であるリサーチです。当社のクライアントさんをはじめ、中小企業にもっとも欠けているステップでもあります。
リサーチは、見込み客の気持ちを理解するためにも、客観的な視点を得る上でも重要なプロセスです。
定性調査 vs. 定量調査─ユーザーインサイトを掘り下げる二つの手法

調査には大きく分けて二つのカテゴリがあります。
一つは、インタビューや観察で 「なぜ」 を探る 定性調査です。
そしてもう一方が、アンケートなどで 「どのくらい?」 を測る 定量調査。
両者は対立ではなく、仮説を深掘りする“探索”と、裏付けを取る“検証”の両輪です。
1:定性で課題の種を見つける:顧客の言葉や行動から、自分たちの思い込みを崩すヒントを得る。
2:定量で発芽率を測る:その種がどれだけ広がるか、どれだけの共感を得られるのか?を人数・割合で確認する。
まずは、拙著「ストーリーで学ぶ新規事業開発」第8章でも解説していますが、市場規模や競合状況を数値化する 定量調査 です。
定量調査とは、その名の通り、量を数字で表すアンケート調査などを指します。この
調査データを参考にすることで、開発後半になってから起きる大きな失敗や支出、方向転換などを未然に防止することができます。
・市場リサーチ=保険:アイデア段階で市場性を検証しておけば、後戻りのコストを最小化できます。
・最初のゴールは“作る前に測る”:
少なくとも「どんな顧客が」
「どれくらい存在し」
「どの程度の熱量で課題を感じているか」
の3点は数字で把握しましょう。
成功するアンケート設計─ゴールから逆算する質問フレーム
定量調査には、ポイントがあります。
それは、
「経営会議でどんなグラフを見せたいか」を先に描き、そこから逆算して質問項目を設計する。
これは、拙著でも強調してお伝えしているポイントです。
・質問数は最小限:
欲しいアウトプットに直接つながらない質問は削除。理由は、回答者のストレスは、
回答の内容を変えてしまうからです。回答者が、興味関心が保てるのは、せいぜい10~15問、時間にして10分程度と言われています。
・評価軸をそろえる:5 段階評価、月間回数、許容価格など、指標を統一して回答者の比較検討と決断の流れをスムーズにしましょう。
・理由を自由記述で回収:数字の裏にある“なぜ”は次の定性調査の素材になります。念のため、記述欄を設定しておきましょう。
サンプルサイズとバイアス対策─信頼できるデータの取り方

サンプルサイズとは、調査にお答えいただく人の人数、バイアスとは、日本語では「思い込み」のことを指します。
つまり、定量調査においては、あまりに調査数(サンプル数)が少ないと消費者の勘違いや思い込みが如実に反映されてしまうため、その対策として少し多めに調査する必要があります。
また、サンプルは多いほど統計精度が上がりますが、闇雲に増やしても属性が偏っては意味がありません。
日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)は比較広告の指針として「400 サンプル程度が望ましい」と目安を示しています。一方で、我々中小企業においては、そんなに大きな数値をリサーチすることは予算上難しいと思います。
ですから、想定できる最大のリスク(投資回収の遅延・資金回収の失敗など)に応じた調査が現実的だと考えています。
調査の信頼性を高める 3 ステップ
1:ターゲットを分解:年代・性別・居住エリアなど主要属性を洗い出す。
2:割付またはウェイト:回収段階で目標構成比に近づける。
3:回答品質チェック:極端値を除外し、データの信頼性を担保。
スマートフォン回答が過半数を占める昨今、設問の見やすさ・操作性は協力率に大きく影響します。
JMRA のインターネット調査品質ガイドライン改定版でもモバイル最適化が強調されています。
低コストオンライン調査ツール活用術─中小企業でもできる市場分析
中小企業にお勧めの調査方法は、既存顧客への協力依頼とネット専業リサーチサービスの併用です。
・セルフ型調査(例:Google フォーム):0 円で実施可能。回答数が足りない場合は、友人・SNS・既存顧客への案内で補完。
・パネル型調査(例:Freeasy・SmartSurvey):数千円から調査が可能です。
・スクリーニング調査→本調査:まず 10,000 サンプルに 3 問で絞り込み、本調査は対象者 100〜400 サンプルで深掘りすると、費用対効果が高まります。
データによる意思決定─調査を根拠にしてビジネスを加速させる方法
「数字はウソをつかないし、クロス分析作業の過程で新しい仮説が生まれる」とは、拙著でお伝えしたかったメッセージです。

データを軸にした意思決定は、新規事業に限らず、自社がすでに展開している商品・サービスの改善にも役立ちます。
顧客のニーズを把握する意味以外に、顧客とのコミュニケーションの機会にもなるからです。
既存顧客に調査をすることで得られるメリットはたくさんありますが、代表的なものは、次の3つです。
1:対話の機会を作ることができます。
顧客との対話は、自社の商品・サービスへの愛着を増加させる最大の施策です。
2:既存顧客の不満を集めることができます。
解約要因や追加ニーズを定量把握することで離反が防げ、追加の売上獲得の可能性も得られます。
3:商品・サービスの改善につながる深い気づきが得られます。
長期利用で蓄積した経験があるため、その生の感覚を聞き取ることができます。
特に、自社の商品・サービスを使っていないまたは、無料で使っている経営者・従業員には目からうろこの話がたくさん聞けるはずです。
まとめ─熱意 × 調査による根拠でビジネスを磨く
作る前に測る:数字で可能性を“見える化”してから開発。
定性+定量の車輪:発見と検証を交互に回し、仮説をブラッシュアップ。
質問設計はアウトプットから逆算:経営層が一目で理解できる図表を描く。
信頼性をアップするためのサンプル設計:バイアスを抑え、少数サンプルでも説得力。
低コストツールを駆使:セルフ型とパネル型を組み合わせ、時間と費用を節約。
既存顧客にこそ調査を:数字という共通言語が、組織の議論を建設的にする。
直感はビジネスの火種ですが、燃料はデータです。熱意に根拠という翼をつけて、あなたのアイデアを安心して世に送り出しましょう。
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それでも、モヤモヤが解消しない場合は、ぜひ一緒に考えさせていただきたいです。
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本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。