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小ロット・短納期”の秘密は、3つのSに

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小ロット・短納期”の秘密は、3つのSに

最終更新日:2025/09/01

みなさんこんにちは!

大阪・堺で「経営のモヤモヤをワクワクに変える!」をビジョンに、みなさまのちょっとした変化を応援しています。中小企業診断士の山本哲也です。

本日は、大阪・八尾で75年にわたりものづくりを磨き続けてこられた関西クラウン工業社さんの、整理・整頓・清潔(3S)を徹底した驚きの現場づくりについてご紹介します。

汎用機を自在に操り、小ロット・短納期の特注工具を実現する現場力と25年以上にわたり蓄積されてきた3Sのノウハウは、素晴らしいものがあります。製造業はもちろん、サービス業など、どんな業界やお仕事にも通じる内容ですから、皆さまにもきっとヒントになるはずです。

裸足で歩ける金属加工工場?!

「油臭くて、床がベタつく金属加工工場」という固定観念をくつがえす場所が大阪・八尾にある関西クラウン工業社さんの本社工場です。

通路のラインは白く輝き、工具ワゴンは一糸乱れず定位置。試しに靴を脱いでみると、コンクリートの床面はさらりとしていて足裏に粉塵は残らない。ここが株式会社関西クラウン工業社、通称“カンクラ”。25年以上にわたり3S(整理・整頓・清潔)を徹底してきた現場です。来訪者が口をそろえて、「まるで裸足で歩けますやん!」と驚きの声を上げると言うのもうなづけます。

関西クラウン工業とは?──ジュース王冠から始まった75年

1950年、創業者・温川政吉氏は大阪市平野区で瓶ジュースの王冠を打ち抜く小さなプレス事業を始めた。王冠=“クラウン”にちなみ、後年「関西クラウン工業社」と社名を定めました。1966年には需要拡大をにらみソケットレンチなどの工具製造メーカーへ事業転換、1977年に八尾へ本社移転し現在の姿に至っています。

従業員8名、資本金1,000万円という規模ながら、冷間鍛造による高精度パーツと特注工具で全国から“駆け込み需要”を受け止めてきました。価格競争に巻き込まれないよう量産ではなく、多品種少量生産にこだわっています。

汎用機こそ最強ツール?!

「小ロット・短納期には、“手に馴染んだ汎用機”がピッタリなんですよ」

温川茂・取締役工場長は、そう笑顔で話してくれました。

新鋭のNC機が多数並ぶ工場とは対照的に、カンクラの主力は1960〜80年代製の汎用機で、私のような素人を寄せ付けない風格が感じられます。長年付き合う機械の癖を知り尽くした温川さんは、治具を自作し、機械をオーバーホール・再塗装して“現役最速”へと仕立て直す。これが、部品一点ものにも即応できる秘密のひとつのようです。

設備の話になると、温川さんの表情はまるで我が子の成長を語る親のようです。

「こいつ(コンプレッサー)が最近すぐにオーバーヒートするんですよ。夏の暑さが規格外ってことでしょうねぇ。なんやかんやで、ほんまに手がかかるんですわ」

それぞれの設備に対する愛情の深さが伝わってきます。

小ロット・短納期を叶える3つの仕組み

1:協力ネットワーク

八尾を中心としたプレス、研磨、表面処理など多くの地元の工場と緊密な連携を実現し、工程ごとに他の工場と分担し最短数日で工具が完成します。

2:The多能工×改造汎用機

当社では、一人で複数工程をこなす“多能工”が当たり前。作業負荷の偏りや工程間の情報共有ミスなどがないことが高い精度の実現に繋がっています。

また、The多能工の温川さん自らが、愛情を持って長年メンテナンスしている加工設備には、数々のオリジナルの工夫が加えられています。

3:3Sの徹底からいろんな気づきがある

3Sの取り組みがスタッフに浸透するにつれ、先入れ先出しや整理・収納の工夫がスタッフ主体で進み、材料在庫が減少したり、空きスペースが増えて作業導線がスムーズになったりしました。また、工場内外のいろいろな部分で改善が自然に進み、加工不良が減少するなど目に見える効果もでています。

これらの効果が相まって、品質向上・不良率の低減、納期短縮など想定を大きく上回る成果が生まれ、今や、これが、他社に対する差別化要因になっています。

25年以上続く3Sの現場力

カンクラが3Sに取り組み始めたのは1999年のことです。

きっかけは、「他社に先んじてISO認証を取得しよう!」と、同業者と勉強会を立ち上げたことでした。当時、ISOはまだ大企業向けのものという印象が強く、「費用や手間がかかるだけでは?」と、多くの中小・零細企業では懐疑的な声も多かったそうです。

「かくいう温川さんも社長がやると言うのなら・・・」とあまり積極的な気持ちではなかったと振り返ります。

ISOの取得勉強会にあたっては、専門コンサルタントを活用してスタートしたのですが、初めて当社工場を訪れたコンサルタントが一言。

「ISOの前にまずは、3Sからやな」

そこからは、毎朝10分の“ひと区画改善”と、週1回の社内3S発表会の継続。

2024年に開催された四国3Sネットワーク13周年大会では“25年の歩み”を基調講演し、今では、他社の模範として紹介されるほどになっています。

私は、恥ずかしながらこのあたりが専門外のため、「どうして5Sではなく3Sなんですか?」と素朴な疑問を投げかけてみました。

その答えは、「中小零細が最初から5Sに取り組むのはハードルが高すぎる。まずは、3Sをしっかりやりきることが大切なんです。3Sをしっかりやれば、自然に5Sも達成できてるものなんです」とのこと。

「なるほどー」取り組みの数をどんどん増やせばいいと考えていた自分が、少し恥ずかしくなりました。

私たちが、特に学ぶべきは、改善前の写真があることです。素晴らしいと思いませんか?改善を達成したあとにビフォーアフターが必要になることを見越して撮影したとのこと。

これぞ、バックバックキャスティング思考です。

“学びを地域へ”──3S推進協会と人材育成

温川工場長は3S活動推進協会の事務局運営も担い、年間延べ300名超の見学者を受け入れています。「他社に見せることで自社も緊張感を保てる」ことが狙いとのこと。協会の企業のなかには、工場見学を研修サービスとして有償で提供している企業もあるそうです。

3S活動の精神は、工場の中だけでなく、地域や同業者を通じて全国に広がりつつあります。

また、コロナ禍で途絶えてしまっていますが、2008年から「八尾ロボットフェア(ロボットコンテスト)」を主催・運営しています。具体的には大阪府八尾市の製造業企業、大学、高専、専門学校などが参加し、ロボット技能と創造力を競う大会です。

まさに地域貢献だけではなく、次のビジネスや八尾の製造業の未来を見据えた先駆的な取り組みと言えそうです。

まとめ:中小製造業の標準を塗り替える挑戦

関西クラウン工業は、

・古い汎用機と職人技を磨き抜き、

・3Sを25年継続して“裸足で歩ける工場”を実現し、

・ネットワークで「小ロット・短納期」という無理難題を解決してきました。

温川さん曰く「うちのアピールポイントは“どんなことにもかならず回答”をモットーにしていることです。あから、さまざまなお困りごとがあつまってくるんです。それを真摯に向き合い解決するのが得意で、特に工具に関してはノウハウがありますのでお任せください」とのこと


みなさまも、もし、業績が停滞していたり、品質不良や労災事故が減少しないようでしたら、ぜひ、自社の工場を3S(整理・整頓・清潔)の視点で巡回してみてください。

――たった3文字ですが、思わぬ大きなパワーを秘めています。3Sは、人を育て、会社を育て、そして顧客を呼び込む力になると私は信じています。

今日ひとつの工具置き場を整えることが、明日のイノベーションにつながるかもしれません。最初の一歩が踏み出せなかったり、途中で挫折しそうになったときは、どうぞお気軽にお声がけください。一緒に、解決の方向性を探していきましょう。

コラムのご感想や具体的なご相談は、こちらから、お気軽にお聞かせください!

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。