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【価格転嫁コラム第6弾】「去年と同じ単価」で、あなたは信用を失っているかもしれません。9月の価格交渉促進月間に備える”公表データ”の集め方

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【価格転嫁コラム第6弾】「去年と同じ単価」で、あなたは信用を失っているかもしれません。9月の価格交渉促進月間に備える”公表データ”の集め方

最終更新日:2026/08/23

みなさん、こんにちは!

「経営のモヤモヤをワクワクに変える!」

大阪・堺からみなさまのちょっとした変化を応援しています。ビジョン実現パートナー山本哲也です。

前回・第5弾では、中小機構の「儲かる経営キヅク君」を使って、目標利益から逆算して値上げ幅を導き出す方法をご紹介しました。「守りの価格転嫁ができたら、次は攻めの目標設定へ」というお話でしたね。

さて、いよいよ今回は交渉の現場で使う「武器」のお話です。

来月9月は、中小企業庁が定める「価格交渉促進月間」。年に2回しかない、いわば"値上げの話を切り出しても不自然じゃない月"です。残された準備期間は、およそ1か月。

今日は、その日までに何を、どこで、どうやって集めておけばいいのかを、できるだけ具体的にお伝えします。

「去年と同じ単価」を見た発注側は、実はこう思っています

見積書を見て考え込む発注担当者のイラスト

いきなりですが、少し立場を変えて、発注する側の本音を1つお話しさせてください。

弊社は経営支援のほかに、教科書の卸売業も手がけています。この仕事には、どうしても年に数回、猛烈な繁忙期がやってきます。そんなとき、臨時の作業を外部の業者さんにお願いすることがあります。

そんなある日、いただいた見積書を見て、ふと手が止まりました。

時間単価が、去年とまったく同じだったのです。

正直に申し上げると、最初に思ったのは「ありがたいな」でした。コストが増えないのは、発注する側としては素直に助かります。

でも、その次に、こう思ってしまったんです。

「この会社さん、働く人の給料をちゃんと支払ってはるんやろか?」

「どんぶり勘定で、給料も低く抑えているのでは?」

「そんな会社に頼んだら、仕事もいい加減かもしれないな」

ここ数年、最低賃金は毎年のように上がり続けています。それなのに単価が1円も動かない。ということは、働く人の給料が据え置かれているか、そもそも自社のコストを把握できておらず利益確保ができていないか、そのどちらかということになります。

前者なら、早い段階で限界がきて、安全性や確実性といった仕事の品質に跳ね返ってくる。後者なら、もっと心配です。

「値上げをしないこと」が信用になる時代は、もう終わりました。

むしろ今は、根拠を持って、きちんと値上げを申し出てくる会社のほうが、しっかり経営している会社に見える。これは、発注する立場に立ってみて初めて実感したことでした。

うれしい反面、不安になる。この矛盾した気持ちを、みなさんの取引先の担当者さんも、案外抱えているかもしれませんよ。

9月は「価格交渉促進月間」。そして"あのリスト"はもう出ています

経済産業省・中小企業庁は、エネルギー価格や原材料費、労務費などが上昇するなか、中小企業が適切に価格転嫁をしやすい環境をつくるため、2021年9月から毎年9月と3月を「価格交渉促進月間」と設定しています。月間の終了後にはフォローアップ調査を実施し、価格転嫁率や業界ごとの結果、順位付けを取りまとめたうえで、状況の芳しくない発注者に対しては事業所管大臣名で指導・助言を行っています。

そして——前回のコラムで「8月上中旬に出ますよ」とお伝えしていたあのリストが、8月4日付けで公表されました。

価格交渉・価格転嫁・支払条件について中小企業から寄せられた回答を点数化し、実名で掲載された発注側企業が「ア~エ」の4区分のどこに該当するのかが明らかにされています。

「値上げの話なんて、うちからは言い出しにくい」——そう思っていた相手が、実は指導を受ける立場かもしれない。逆に、評価の高い企業であれば「御社は交渉に応じてくださる会社だと伺っています」という切り出し方もできます。

まずは一度、ご自身の目で、取引先の名前を探してみてください。それだけで、9月に向けた心の準備がずいぶん変わるはずです。

ところで、あのアンケート、封を切っていますか?

このリストのもとになっているのは、中小企業庁が受注側の中小企業30万社に対して送っているアンケートです。

「うちには関係ない」「忙しい」——そう思って、封も切らずに書類の山に紛れていませんか。

実は、これ、めちゃくちゃ重要な書類です。

なぜなら、これはみなさんの取引先である大手企業が、我々中小の受託事業者に対してどうふるまっているかを答えるためのアンケートなのですから。しかも、その回答は集計され、企業名とともに公表されるのです。

もちろん、下請法(現在の取適法)そのものは昭和31年からある古い法律です。ただ、これまでは「違反があれば取り締まる」という"点"の対応が中心でした。それが今は、取引の状況を面で調査し、企業名を公表し、大臣名で指導するところまで踏み込んでいる。第1弾でお伝えした「面的執行の強化」が、まさに形になったのがこのリストです。

事業者間の取引は当事者同士の問題——その常識が、いま大きく変わりつつあります。

もし御社に届いていたら、絶対に回答してください。その1枚が、業界全体の取引環境を動かします。

交渉の武器になる「公表データ」3点セット

さて、ここからが本題です。交渉の場で「なんとなく高くなったので」は通用しません。必要なのは、第三者が発表した、誰にも動かせない数字です。とくに労務費については、次の3つを押さえておけば十分に戦えます。

使うデータ 2026年8月時点の最新値 交渉でどう使うか
① 最低賃金 大阪府は8月5日、時間額1,231円(54円・4.59%増)で答申。10月1日から適用の見通し(現行は1,177円) 「地域の賃金の下限が4.59%上がる」という逃げようのない事実
② 春闘の妥結額 連合の最終集計で、300人未満の中小組合は12,866円・4.69%。有期・短時間等の労働者は時給75.01円・6.18% 「世間相場はこの水準です」と示す社会的な物差し
③ 物価・原材料の指数 埼玉県の「価格交渉支援ツール」なら主要原材料1,422品目の値動きに加え、労務費データ(業種別現金給与総額、都道府県別最低賃金、男女間賃金格差)も分析可能 そのまま印刷して持参できるエビデンス資料

ちなみに全国では、2026年度の引き上げ目安が全国平均55円(4.9%)と答申され、目安どおりなら平均1,176円になります。大阪だけの話ではありません。

どこで手に入れるか(検索ワード付き)

セミナーでいちばん喜ばれるのが、実はこの「調べ方」の部分です。

③について「なぜ大阪の診断士が埼玉県?」と思われたかもしれません。実はこのツール、県外の企業でも無料でダウンロードして使えます。基礎データも定期的に更新されており、2026年7月基準まで反映されています。よくできた仕組みは、遠慮なくお借りしましょう。

データは「集め方」より「使い方」で差がつく。必ず押さえたい3つの落とし穴

データ資料を手に商談する中小企業の経営者のイラスト

集め方より使い方に気をつけていただきたいのには、理由があります。データは、使い方を間違えると一撃で返されてしまうからです。よくある3つの落とし穴を挙げておきます。

落とし穴①:「最低賃金が上がったので値上げしてください」

これは「御社に最低賃金で働いている方、いませんよね?」で終わります。

正しくは、最低賃金は"下から全体を押し上げる力"だと説明すること。最賃が4.59%上がれば、その上で働く社員の賃金も連動して引き上げざるを得ません。「当社では年間○○円のコスト増になります」まで言えて、はじめて根拠になります。

落とし穴②:「春闘は5%だったので、うちも5%お願いします」

これも「それは大企業の話でしょう」で終わります。

春闘のデータは、自社の実額を証明するものではなく、"世間相場の物差し"です。「世間はこの水準。当社は中小平均の4.69%にも届いていません」という使い方が正解です。

落とし穴③:根拠を出しすぎて、利益を丸裸にしてしまう

セミナーでも「大手から、どの部品がいくらで、どの加工にいくらかかっているのかまで聞かれ、利益が全部見えてしまうのが怖い」というご相談をいただきました。これは本当に切実な問題です。

原価の内訳をすべて開示する義務はありません。出すべきは「上昇率」です。「労務費が4.6%上昇したので、単価に1.8%反映させてください」——額ではなく率で語ることで、自社の手の内を守りながら、相手の稟議も通りやすくなります。

八尾商工会議所のセミナーでいちばん反応があったこと

7月に八尾商工会議所さんで開催した価格転嫁・価格交渉のセミナーは、おかげさまで満席の盛況でした。ご参加くださったみなさま、本当にありがとうございました。

終了後のアンケートで特に多かったのが、こんな声です。

労務費の根拠の調べ方が分かったので、交渉しやすくなりそう」

「具体的な検索ワードを知れたのが良かった」

「値上げの理由は、公式資料を持って、率で示すことが大事だと分かった」

その一方で、切実なお悩みもたくさんいただきました。

「短期間に何度も交渉はできない。どうすればいいのか」

「取引先の、そのまた先の大手が値上げに消極的で…」

——そうなんです。データは「準備するもの」であって、「振り回すもの」ではありません。

私たちは、日頃から定期的な情報交換の場を設定することを提案しています。そこで、取引が続いていることで自社が解決していることやその具体的な対応策(短納期・小ロット・特別仕様など)、失敗やクレーム、今後の方向性などをきちんと伝えておく。また、相手からの要望や不満が大きくなる前に聞き取っておく。

私は20年以上前に、アメリカのサービスマスター社からこの手法を学び、たくさんの成果を得ることができました。いまでも十分に使える、重要な手法です。(詳しくは、また別の機会にお話ししますね)

そのうえで、年2回の促進月間という"公式の口実"を使うこと。この2つが揃って、はじめて交渉のテーブルが整います。

9月1日までにやること、3つだけ

☑ 1. 発注者リストで、自社の取引先の名前を探す

☑ 2. 最低賃金・春闘・物価の3データを印刷しておく

☑ 3. 自社のコスト上昇を「率」に直しておく

全部を完璧にやろうとしなくて大丈夫です。

1だけでも、今日やってみてください。

📣 9月1日まで、あと3週間。

データは、探せば無料で手に入ります。足りないのは時間ではなく、「最初の一歩を踏み出す踏ん切り」だけかもしれません。

先送りはやめましょう。モヤモヤをワクワクに変える一歩を、今日も一緒に踏み出しましょう!

※八尾商工会議所の専門家相談もご利用いただけます。無料で、会員でなくてもご相談いただけます。

※本コラムの内容は執筆時点の情報に基づいています。大阪府最低賃金は答申の段階であり、正式決定は今後の手続きを経て確定します。最新情報は各公式サイトでご確認ください。

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FAQ

よくあるご質問

Q. 最低賃金で働いている社員がいなくても、最低賃金は交渉の根拠になりますか?

なります。ただし説明の仕方が重要です。最低賃金は賃金の下限を定めるものですが、下限が上がれば、その上で働く社員の賃金も連動して引き上げざるを得ません。「最賃が上がったから」ではなく、「最賃が4.59%上がることで、当社の賃金水準全体がこれだけ押し上げられる」という形で、自社への影響額まで示すことが必要です。

「モヤモヤ」を「ワクワク」に変えるヒント:「うちには関係ない」と思った瞬間に、使える武器を1つ手放しています。まずは自社の賃金テーブルの一番下と最低賃金の差を確認してみてください。

Q. 発注者リストはどこで見られますか?取引先が載っていたらどうすればいいですか?

中小企業庁のサイトで公開されています。「中小企業庁 価格交渉促進月間 フォローアップ調査」で検索してください。掲載されていた場合も、その区分をそのまま交渉で持ち出すことはおすすめしません。あくまで自社が交渉に臨む際の心構えや、切り出し方を考える材料としてお使いください。

「モヤモヤ」を「ワクワク」に変えるヒント:相手を追い込む材料ではなく、こちらの不安を減らす材料だと考えてください。「言い出しにくい」が「言ってもいいんだ」に変わるだけで十分です。

Q. 大阪の会社ですが、埼玉県のツールを使っても大丈夫ですか?

県外の企業でも無料でダウンロードして利用できます。主要原材料1,422品目の値動きに加え、業種別の現金給与総額や都道府県別の最低賃金といった労務費データも扱えます。都道府県別のデータが入っているため、大阪の企業が大阪の数字を取り出すことも可能です。

「モヤモヤ」を「ワクワク」に変えるヒント:「自分の県のものじゃないから」と遠慮する必要はありません。使えるものは使う。それも経営判断のひとつです。

Q. 原価の内訳を全部見せてほしいと言われたら、応じる義務はありますか?

すべてを開示する義務はありません。価格の根拠を示すことと、原価構造をすべて明かすことは別の話です。「労務費が○%上昇したため、単価に○%反映をお願いしたい」というように、上昇率で説明すれば、自社の利益構造を守りながら根拠を示せます。

「モヤモヤ」を「ワクワク」に変えるヒント:断りにくいと感じたら、「率でお示しします」と先に提案してみてください。開示を拒むのではなく、別の形を提示するほうが関係を壊しません。

Q. 9月の価格交渉促進月間に、具体的に何をすればいいですか?

この月間は、交渉を切り出すための「公式の口実」として使えます。「国が価格交渉を推進する月間ですので、一度お時間をいただけませんか」という形で、値上げの話をする場そのものを設けやすくなります。まずは資料を揃え、面談の申し入れをするところまでが現実的な目標です。

「モヤモヤ」を「ワクワク」に変えるヒント:いきなり結論を出そうとしなくて大丈夫です。「今回は話ができた」だけでも、次につながる大きな一歩です。