新規事業開発の一丁目一番地
こんにちは。大阪・堺から「経営のモヤモヤをワクワクに」変える、ビジョン実現パートナーの山本哲也です。
今日は、少しユニークな進化を遂げてきた株式会社くらすむーぶをご紹介します。大阪市住之江区に本社を置き、創業以来、地域に根差して事業を磨き続けてこられた会社です。
私たちの出会いは、大阪市が主催する新規事業開発の支援プログラムでした。くらすむーぶが構想していたのは「高齢者のための家事・生活支援」。
私自身、以前は株式会社ダスキンで家事代行やハウスクリーニングに携わっていたこともあり、現場の勘どころを共有しながらディスカッションを重ねました。
今回のコラムでは、「市場の変化に、自社の強みを真っすぐぶつける」という王道を体現する企業として、くらすむーぶの現在・歩み・そしてこれからをお届けします。
そっと隣で、暮らしを整える
荷物を運ぶだけで終わらない引越しがあります。段ボールを開けたその日から生活が回り、ご本人もご家族もほっと息をつける――くらすむーぶが大切にしているのは、そんな“暮らしのリスタート”まで見届ける姿勢です。
引越しの確かな技術に、介護・片付け・清掃といった知見を重ね、地域包括支援センターやケアマネジャー、医療機関、住宅紹介の窓口などと連携。単なる「運ぶ作業」ではなく、生活の再設計まで視野に入れた段取りで、不安を小さくしていきます。
運ぶ・片付ける・整えるを一本の線に
同社の高齢者向け引っ越しは、家財の仕分け、片付け、清掃、必要に応じた引取り・処分の手配までをメインに、事情によってはごみがあふれたおうちの片付けにも対応します。そのコンセプトは一言でいえば「住み慣れた家に一日でも長く暮らせる、安全で安心な居住空間の創出」。
子育て期に最適だった間取りや動線は、加齢とともに“つまずき”になり得ます。だからこそ、使う頻度に合わせた置き場所の見直し、夜間の導線、薬や補助具の定位置化など、初日から迷わない配置を丁寧に整えます。ヘルパー資格を持つスタッフや、元消防士の発案による工夫を活かし、「防災・減災」「高齢者の自立支援」という視点からレイアウトを設計するのも同社らしさ。
一連の支援は、関係者との密な連携で切れ目なくつながり、必要があればその後の家事やお掃除までフォローします。さらに現場で培った実践知は、セミナーや資格講座としてケアマネジャーや行政担当者にも開き、地域全体の片付けリテラシー向上に役立てています。

原点と転機――運ぶ会社から、暮らしを整える会社へ
こんなサービスを展開しているくらすむーぶですが、出発点は運送業にあります。
1981年、先代社長が赤帽からスタートし、歴史を重ねてこられました。
そして1998年に、現代表の宮髙 豪(みやたか・ごう)氏が入社し、2015年に経営のバトンが託されました。当時はバブル崩壊やリーマンショックの影響で運送事業が厳しさを増していた頃でもあります。
宮髙氏のキャリアの出発点は銀行員。私生活で祖母の介護に向き合ったことを機にヘルパー資格を取得します。現場に身を置いて気づいたのは、「引越しや片付けが“作業”で終わると、肝心の生活が立ち上がらない」ということ。薬はどこに置けば迷わないか。夜間に転びにくい動線はどう作るか。思い出の品にどう折り合いをつけるか――それらは高齢者のQOL向上の最重要テーマだと確信した瞬間でした。
「運送の確実さ」に「介護と整理の知恵」を重ね、「運ぶ→整える→見守る」を一本の線にしよう。そうして生まれた現在の事業は、段取りを“思いやり”に変えるという価値観に支えられ、今のくらすむーぶの姿を形作っています。
現場カルチャーが仕事を強くする
会議の風景にも、同社の現場主義がにじみ出ています。
元銀行員らしく、宮髙氏は数字をベースに仮説を組み立てます。一方で、現場で活躍する専務(奥さま)や経営企画担当の宮崎氏が、率直で具体的な指摘を重ね、ロジックを現場の言葉で磨いていく。
議論は時に白熱し、時に笑いが起きる――良い意味で「顧客のためなら何でもあり」の状態です。このように心理的安全性が担保された場では、遠慮なく課題を出し合える分、解決策の幅も広がります。だからこそ、既存の延長では生まれないアイデアが育ち、日々の現場運営が常に前進していくのだと感じます。
同社のWEBサイトでも紹介されている事例ですが・・・
配偶者を亡くされたAさんの片付け支援では、作業効率よりも対話を優先しました。品目ごとに「要・不要」とその理由を一緒に言語化し、ご本人の体調に合わせて複数回に分けて実施。最終的に、着替えや服薬の“定位置”が明確になり、動線上のつまずきも解消されました。
Aさんは「物の整理だけでなく、気持ちの整理もできました」と一言。片付けの“正解”を押しつけないこと。暮らしの主役が自分で選べるように伴走すること――それが、くらすむーぶの仕事なのです。
これから――安心の標準化を、温度を保ったまま

同社が見据える次の一手は、現場で積み上げてきたノウハウを、もっと多くの関係者に届けることです。
すでに約10年前から、全国の有志運送事業者とともに一般社団法人住むーぶ全国協議会を立ち上げ、高齢者向け引越の知見を共有してきました。一方で、介護保険外の手厚い支援を旨とするがゆえに、地域包括支援センターやケアマネジャーの皆さんへの情報提供は、まだ十分とは言い切れません。だからこそ、これからは全国の仲間たちと連携し、学びと事例を広く開いていくことで、一人でも多くの高齢者が一日でも長く住み慣れた自宅で暮らし続けられる――そんな安心・安全な環境づくりを後押ししていきたい。
超高齢社会の今こそ求められるサービスだと、私たちは確信しています。
結びに。
新規事業の王道はいつだってシンプルです。
市場の変化を直視し、自社の強みを真っすぐぶつける。くらすむーぶの歩みは、そのシンプルさを丁寧に積み重ねた結果にほかなりません。
今日も現場で“暮らしのリスタート”を見守る人たちへ、心からエールを送りたいと思います。
FAQ(よくある質問)
Q1. 「市場の変化に自社の強みをぶつける」とは、どういう意味ですか?
A. カギは「社外」と「社内」をセットで見ることです。社会や業界の変化(高齢化、人手不足、DX、制度改正、補助金の方向性など)という“外部環境”と、自社の技術・顧客との関係・人材といった“内部の強み”を組み合わせ、新しいサービスやビジネスモデルを生み出すことを指します。経営改善や事業再構築、新規事業開発の基本発想とも言えます。
Q2. 新規事業のアイデアは、どこから見つければよいですか?
A. いきなり「ゼロから発明」しようとせず、①既存顧客の困りごと、②自社が得意な仕事・評価されている点、③市場や制度の変化(例:補助金の重点分野、超高齢社会、人材不足)を並べてみるのがおすすめです。その交点に「今のリソースで取り組みやすい新規事業のタネ」が見つかりやすくなります。やってみたいこと、ワクワクすること、子どもたちに話せることに取り組むのが一番だと思います!
Q3. 補助金は、新規事業や経営改善にどう活用すればよいですか?
A. 補助金は「ゴール」ではなく「成長の加速装置」と考えるとよいです。まず、自社が取り組みたい新規事業・経営改善の方向性(例:事業再構築、人材育成、設備投資、DXなど)を決め、その計画を後押ししてくれる制度を選びます。大阪・堺エリアでも、国・自治体・商工会議所など多様な支援策があるため、「やりたいことありき」で情報収集するのがポイントです。あくまで、タイミングが合えば使うべきであって、使うが前提ではないと考えています。
Q4. 大阪・堺など地域密着の中小企業は、どんな視点で新規事業を考えるとよいですか?
A. 地域密着企業の強みは「顔が見える関係」と「現場の情報」です。地域の高齢化、空き家、子育て、外国人材、介護・医療、物流など、身近なテーマに自社のノウハウを掛け合わせると、独自性の高いサービスになりやすいです。本文の事例のように、「運ぶ」「片付ける」「教える」といった既存の強みを組み合わせるだけでも、新たな価値が生まれます。
Q5. 経営改善と人材育成・研修は、どうつながっているのでしょうか?
A. 数字の改善だけを目指す経営改善は、一時的な効果で終わりがちです。現場のリーダーやスタッフが「なぜこの改善が必要なのか」「お客様にどんな価値を届けたいのか」を理解し、自分ごととして動けるようになることで、売上・利益・生産性向上が持続します。その意味で、人材育成・研修は、補助金や設備投資と同じくらい「経営改善・事業再構築の土台」となる投資です。
Q6. 既存事業が厳しくなってきたとき、まず何から手をつけるべきですか?
A. いきなり大きな事業転換を狙うのではなく、①既存事業の磨き直し(見える化・ムダ取り・価格や条件の見直し)、②小さな実験としての新サービス・新ターゲットへの試行、③それらに合う補助金・支援制度の確認、の3ステップがおすすめです。売上の柱を増やしつつ、同時に人材育成・研修で現場の理解とスキルを底上げしておくと、変化に強い体質に近づきます。
Q7. 自社でも「市場の変化×自社の強み」で新規事業を考えたい場合、どこから始めればよいですか?
A. まずは ①自社の強み(現場力・技術・顧客との関係性など)を書き出し、次に ②市場や社会の変化(高齢化、人手不足、DX、ライフスタイルの変化、補助金の重点分野など)を整理することから始めます。そのうえで、「この強みは、どの変化に一番フィットしそうか?」を仮説として組み合わせてみると、本文で紹介したような新しいサービスの種が見えやすくなります。
Q8. コラムの内容について相談したい場合、どのような支援を受けられますか?
A. 本コラムの執筆者である山本は、中小企業診断士・コーチとして、新規事業開発やサービス設計、強み整理ワークショップ、人材育成・研修設計などのご支援を行っています。「自社版くらすむーぶを考えてみたい」「補助金や事業再構築と合わせて相談したい」「大阪・堺エリアでの経営改善のパートナーがほしい」といったご相談から、具体的なプロジェクトのご依頼まで、お気軽にお問い合わせフォームからお寄せください。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ご感想やご相談、くらすむーぶ社へのお繋ぎは、いつでもお気軽にどうぞ。





