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研修担当者が誤解しているがんばりどころとは?

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研修担当者が誤解しているがんばりどころとは?

最終更新日:2024/04/06

みなさんこんにちは!


大阪堺で「経営のモヤモヤをワクワクに変える!」をビジョンに、みなさまのちょっとした変化を応援しています。中小企業診断士の山本哲也です。

ところでみなさんは、研修に対してどのようなイメージをお持ちですか?

「たいくつ・・」


「学びたいタイミングと合っていない」


「会社から命令があって仕方なく受けるもの」


「本業が遅れる・・時間の無駄」などなど


どちらかというと、ネガティブなイメージをお持ちになる方が多いかも知れませんね。

一方でポジティブなイメージだと・・


「スキルアップに繋がる」


「普段会えないメンバーと会える」

なんて研修とは無関係な意見も出そうです。

いずれも若いころの、私個人の感想です(笑)

ちょうど旬な話題である研修について、自分の頭の整理もかねてコラムにまとめてみました。

研修するなら、がっつりがおすすめな理由

私も研修に関するご相談を頂いて、提案をしている身ですので、非常に言いづらいのですが・・・

「研修で組織を変えたいんなら、求める成果に見合うように、今の何倍もの時間や労力をかけて、相当がっつりやる必要あるんじゃないか?」と考えています。

研修を受講者視点で捉え直すと・・・関心のないテーマだと時間の無駄だし、かといって、関心のあるテーマについて学ぶには、時間が足りなかったり、学んだことを職場に持ち帰っても、自分一人では、うまく再現できなかったり・・・。
なかなかハマることが少ないと思いませんか?

それは、当たり前じゃないかなと思うのです。

なぜなら、普通の研修は、基本的に集合型かつ、いくら個社ごとの微調整をするにせよ、あくまでも研修会社が開発した内容であって、洋服で言うと大量生産の既製品です。少なくとも、一人ひとりの性格、ポジション、置かれている環境や、抱えている課題を理解した設計にはなっていません。

つまり、研修受講者の努力も必要な設計になっているのです。


例えば、受講者自ら学ぶ姿勢も必要ですし、学んだことを自分に合うようにカスタマイズしたり、知識が定着するように復習したり、自分のものにできるように試行錯誤をしたりする必要がありますよね。

研修成果が現れないのは、決して企画部門担当者の責任ではないのです。
受講者の主体性や、高い成長意欲があってこその研修なのです。

そのため、研修会社や講師に対して、主体性と高い成長意欲を持たせるところからお願いする必要があります。つまり、相当な費用を準備して、質や量の面で相当がっつりした研修を発注しなければ、ならないのではないでしょうか?

研修の成果をどうやって測定していますか?

本コラムは、「研修の成果を上げよう」というテーマで書き始めましたが、そもそも、御社では、研修の成果を計測していますか?

営業であれば、新規契約数の前年比や前月比なんて当たり前に比較しています。また、製造であれば、製品歩留まりや原材料歩留まりの推移なども把握しているでしょう。

私自身、研修企画担当をしたことがほとんどありません。そのため、お恥ずかしい話ですが、研修成果は受講者アンケートで図ったり、研修に参加して体感するくらいしか、したことがありません。

研修成果の計測方法

研修成果の測定方法に「カークパトリックモデル」という効果的な枠組みがあります。


この枠組みは、ウィスコンシン大学名誉教授ドナルド・ L・カークパトリックが1975年に提唱した教育の評価法をまとめたモデルのことで、以下の四つのレベルで研修の効果を評価するというものです。

カークパトリックの4段階評価法

具体的な測定方法には、アンケート、テスト、職場での観察、業績指標の分析などがあります。
確かに、多面的ですね。継続的に計測することで研修成果を定量的に評価でき、内容の見直しや投資対効果の向上にも活かせそうです。

カークパトリックモデルではどのように評価するのでしょう?


まず、どこの組織でもやっている、受講直後のアンケートで満足度調査を行います。これが「反応」です。
続いて、筆記試験や口述試験などで学習到達度を図ります。これが、「学習」です。
次に、受講者が設定した”職場に持ち帰って行う行動”が実際にどれだけできているかを評価します。これが「行動」です。
最後に、実際に受講者が担当している業務での業績がどの程度向上したのかについて計測します。これが「業績」です。

あなたも「研修やって業績があがるなら誰も苦労しない」なんて嫌味を言われた経験が一度や二度はあるでしょう?

あれ、腹立ちますよね・・・。ちょっと思い出してしまいました(笑)

評価結果の活かし方

評価方法を学んだことで、仮に評価ができるようになったとしましょう。

しかしこれだけでは、毎日体重計に乗るだけのダイエットですから、簡単には、成果は上がりませんよね。
では、この評価結果を成果に結びつけるにはどのようにすれば、よいのでしょう?

次の章では、私ならこんな風に評価結果を成果に結びつけるなぁ・・というアイデアをお伝えします。決してカークパトリック先生のお話ではなく、私個人のアイデアですのでくれぐれもご注意ください。

評価するのは誰か?

私が、まず着目したのは、研修を評価するのは誰か?という点です。


ダイエットであれば、お家やジムの体重計ですし、野球であれば審判です。スポーツの世界では「審判を味方につける」などと言う言葉もありますよね。

私の頭にその言葉がよぎりました。

そこで、私は、社内研修での「審判」とは誰だろうと考えてみたのです。

「反応」は、受講直後に受講者が評価するので、審判は、受講者。


次に「学習」では、筆記試験や面談をするので、テストの評価者が審判。つまり、研修主催部門または、講師になりそうです。設計次第では、職場の上司や研修部門の最高責任者でも良いかも知れません。


「行動」は、職場の上司または、職場のメンバーが審判。


最後に「業績」は、職場次第ですが、職場の上司になりそうです。

ここまでの話を整理すると、研修成果をアップするための関係者には、研修主催部門および、研修主催部門責任者、研修講師、受講者、受講者の職場の上司や同僚など多様なメンバーが存在すると言えそうです。

ここで登場するのがバックキャスティング思考

どうでしょう、少しづつ解決の糸口が見えてきたのではないでしょうか?
ここからは、おなじみのバックキャスティング思考を活用して考えてみましょう。

研修の効果を最大にし、業績を上げるには、どのような行動が必要か?

そのためにはどのような研修コンテンツが必要か?について職場の上司に検討してもらう。または、研修担当者とともに考えてもらう。


次に、評価する職場のメンバーおよび受講者本人にも参加してもらい、評価対象はどんな行動がベストか?他に代替案はないか?について自分たちが受講する研修であることを前提に考えてもらいます。


そして、それらの内容を受けて、研修主催部門スタッフと責任者および研修講師で全体設計や評価基準、評価方法について検討します。

実現性はさておき、ざっと考えただけでもこれくらいアイデアがでてきました。

もしかしてこれって、主体性ですね。

研修という言葉に対して、みんなが持つイメージが受け身がゆえに研修の効果が小さくなってしまっているのではないでしょうか?

もし、あなたが、研修効果を大きくしたいと考えるなら、関係者全員の主体性をアップするのが一番の近道と言えそうです。

ちなみにですが・・・。


またまた、私の前職時代の話で恐縮ですが、いずれコンサルタントとして独立しようと決めてからというもの、社内研修を受ける姿勢が決断以前とは180度変わりました。

それまでは、上述の通り、受け身でネガティブ100%だったのですが、自費で研修を受講したり、参加した研修では、講師の立ち振る舞いやカリキュラムやテキスト、スライドにまで関心が向くようになりました。


つまり、受講姿勢が変わると、視野も広がり、視点も変化するのです。

ほんと、お恥ずかしい話です。

とは言え、簡単ではない解決策

研修企画に、職場のメンバーや責任者も巻き込むというのは、そうそう簡単に実現できる話ではありません。それなりに反対意見もでるでしょうし、協力的な姿勢を示してくれる管理職ばかりではないでしょう。

ではどうすれば良いのでしょうか?

この場合の解決策には、大きく分けて、上からと下からの2つがありそうです。

まずは、正攻法「トップダウン方式」


手順としては、研修主催部門で企画を行う際に、決裁者と意見調整をしっかり行い、実施内容が決まったら、決裁者や経営層を通じて参加部門に働きかける方法です。成果が上がらなかった場合の責任を関係者全員でシェアすることになりますので、責任者の働きかけも強くなるでしょうし、働きかけを受けた方も、会社全体行事となれば、取組み意識も変わりそうです。

もう一方は、「ボトムアップ方式」です。

ここまで出てきた関係者とそれぞれ、個別でも良いので、打ち合わせを行い、意見を吸い上げ、それを企画に落とし込むのです。また、企画に反映した内容は、適宜、受講者部門のメンバーや管理者にも情報共有します。これにより、関係者全員の意見が反映された研修プログラムが構築されていくはずです。

まとめ

今回は、研修効果を最大化するにはどうすればよいのか?について頭の整理がてら、書き起こしてみました。

まとめると・・・
研修担当者が、がんばらないといけないのは、企画そのものでもなく、講師選びでもなく、当日の運営でもありません。

研修担当者が、がんばらないといけないのは、研修受講者とのインタラクティブなコミュニケーションではないでしょうか?


なぜなら、研修担当者にとっては、受講者がお客さまだからです。ユーザーの声を聴く、ユーザーを製品開発に巻き込む、ユーザーとコミュニティを作る。といったマーケティング的発想の応用ですね。

とは言え、新人研修などの一般的な職位別研修では、ティーチング手法が一般的ですし、必要不可欠ですので、現状の研修でも問題はないのでは?と考えています。


従来通りと言えども、オンラインか、オフラインか?または、オンデマンドか?など、研修のスタイルや開催手法についても関係者の意見を取り入れて設計する方が、きっと良いものになるでしょう。

また、研修そのものを「ティーチング的な研修からコーチングセッションに変更する」という手法も大いに採用されている解決策です。

例えば、『今、必要とされるリーダーとは?』などとテーマを決めて外部のコーチと長期視点(6か月間くらい)で検討・試行錯誤するのです。時間の経過とともに、受講者の主体性が醸成され、自分が社内で発生している問題の当事者であると言う風に捉え方が変わったり、自分が研修担当者かのような錯覚に陥ったりすることで、当事者意識が芽生えたりする効果が期待できます。


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山本 哲也