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失恋より深刻な解約を考える。

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失恋より深刻な解約を考える。

最終更新日:2022/05/04

みなさま こんにちは、大阪府堺市からみなさまのちょっとした変化を応援しています。堺なかもず経営支援センターの中小企業診断士山本哲也です。今日は、失恋ほど深刻ではないのですが・・・本来は、真剣に向き合うべき、「解約」について考えてみたいと思います。辛気臭いと言わずにお付き合いください。

ワクワク感はないけれど大切なこと

マーケティングのお話や新規事業のお話は、“ワクワク感”を持って語られるのですが、解約のお話はあまり語られない。自分たちの考えたサービスが、一度もあったことのない第三者に評価されて、命の次に大切なお金を支払ってまで手に入れようとしてくれるわけですから。そりゃワクワクもしますよね。私もワクワク派です。
いま話題の事業再構築補助金など、国のいろいろな補助金も新しい取り組みを支援する形になっていることがほとんどです。でもね、今日は、今から5分だけでよいので、解約のことを一緒に考えていただいて、その大切さを思い出して欲しいのです。

10%は大きいか小さいか?

では、まずは、質問から。
あなたが、何か会員制のサービス(サブスクリプションモデルなど)を提供しているとしましょう。ほとんどのビジネスが、リピーターもしくは紹介で成り立っていると考えると、それはある種サブスクみたいなものです。もし、サブスクリプションモデルを「休眠会員で儲かるサービス」と捉えている人がいたら、それはかなり危険信号です。(この話はまた別途しますね。)

気を取り直して・・・。
毎月10名の新規会員を獲得できるが既存会員の10%が何らかの理由で退会する
という会員制の小さなビジネスがあるとします。想像できましたか?宅配牛乳だと月額利用料は4,000円くらいでしょうか。このビジネスを新しくスタートさせて会員が100人になるのはいつか?

「10か月後ではないよなぁ。毎月10%の退会者を加味すると・・・。1年半くらい?」いかがでしょうか?

毎月10名の新規入会があるが、既存会員の10%が毎月退会するサービスにおいて会員100名になるのはいつか?

その答えは・・・50か月目です。

なんと、毎月10名の新規会員がいるのにも関わらず、4年以上の歳月が必要なのです。グラフにすると以下の通り。そして、計算すると当たり前の話ですが、
このビジネスの会員が101人になることは一生ありません。
なぜなら、会員が100名になった段階で毎月10名が退会する計算となり、新規入会は変わらず10名ですから。会員純増は0というわけです。

▼ではどうすればよいのか?

解約率10%と聞いてどんなことを考えましたか?「10人で1人?それくらいはビジネスモデルに織り込んでおかないと」と感じましたか?それとも「会員が1000人いたら毎月100人も辞めちゃうのか?そりゃ大変だ」と感じましたか?どちらも普通のビジネスパーソンの感覚だと思います。
また、「もっと新規契約を増やす施策をした方がいいな」と考えるのか。それとも「すぐにでも解約客ストップキャンペーンをして、引き留めないと」と考えるのか・・・。
先ほどお伝えしたことが事実です。毎月10名の新規会員と既存会員の10%が退会するビジネスの限界は100名×客単価なのです。
つまり、新規会員獲得の目途がたったら、次にやることは、会員獲得の効率化ではなく解約客抑制なのです。

▼解約防止キャンペーン。解約客に特典をつけるのか?

ではどうやって防止しましょう。
特典をお渡しして、引き留めますか?それとも解約処理を難しくしてあきらめさせますか?どちらも一定の効果があると思いますが、私たちのような地元密着のスモールビジネスが行うべき方法とは思えません。
いつもお伝えしていることの繰り返しになってしまい恐縮ですが・・・。
私がいつも事業者さんにお願いしていることは、とにかく「事実を把握する」「顧客に訊く」の二つです。

▼事実を把握することと顧客に訊くこと

まずは、事実を把握するために、新規獲得のマーケティングと同じように退会者の属性を把握しましょう。
どこにお住いのどんなライフスタイルの方が。どのような利用状況だったのか?WEBサービスなら、どのページを利用していたのか?いつ、どのような理由で入会したのか?

顧客に訊くことは、たった一つ「なぜ解約を決意したのか?」です。
できれば、おひとりおひとりとフェイストゥフェイスでお聞きしたいくらいです。もちろん解約手続きの段階で伺って反論をして引き留めることもしたいです。私たちは、身を削るような思いで顧客のことを考え、特典や無料サービス、料金の引き下げを提供していますが、実は、顧客には案外伝わっていないものです。あなた自身も自分のいつも使っているクレジットカードのすべての特典を理解していますか?今これを読んでいるデバイスのすべての機能を把握していますか?
解約の時こそ、これらの顧客サービスについてお伝えする良い機会です。「〇〇ができることをご存じでしたか?」これらの情報提供や引き留め工作によって10%の解約率低下ができるそうです。

解約ページに解約理由を入力するフリーコメント欄を用意すると約40%の人が何らかのコメントを入力してくれます。
おそらくは、単なるクレームもあると思いますが、サービス改善につながる貴重な意見が必ず発見できます。ユーザーでないと気づけないような新たな視点を手に入れることにつながるはずです。もし、対面型のサービスや対面型の解約手続きを取っているサービスの場合は、解約のその場での質問に加えて、メールやメッセンジャーなどで後から、匿名でよいので解約した時の心情について伺うことをお勧めします。
契約中のユーザーの声を聴くこともとても重要な仕事で、私もいつもみなさんにお願いをしていますが、解約時の顧客の声はそれにもまして重要です。なぜなら、契約中の顧客は、ある程度、私たちのサービスに満足してくれているので、それほどサービスの内容を深く考える機会がありません。
一方、解約客は、私たちよりもサービスに向き合い「今後このサービスを続ける必要があるか?このサービスが生活から無くなることで困ることはないか?そもそもなぜ、契約することにしたのか?」などなど深く考えているはずです。
解約することは、過去の自分(このサービスを契約した自分)を否定することにもつながりかねないわけですから。
そんな顧客の頭の中を少し共有してもらうことは、非常に有用な取り組みだと思うわけです。

今日は、解約について一緒に考えてみました。やっぱり顧客の声を集めることは何よりも大切なことですね。

おまけ

写真は、先日、中小企業大学校仙台校へ研修受講に行った際にいただいた太助の牛タンです。あーまた食べたくなってきた・・・。蔓延防止期間だったためにお水と牛タンの組み合わせでしたが、十分に幸せを味わうことができました。仙台へお出かけの際は、ぜひお立ち寄りください。入った瞬間しか後悔はありません(笑)必ずリピートするはずです。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
中小企業診断士 山本哲也


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